マンションで民泊はできるか ── 規約に定めがないとき
- 「専ら住宅として使用する」という規約だけでは、可否は決まらない。住宅宿泊事業は住宅を使う事業だから
- 国は2017年8月にマンション標準管理規約を改正し、可能とする場合と禁止する場合の双方の規定例を示した
- 規約に定めがない場合、届出には管理組合が禁止する意思を持たないことを確認した書類が要る
- 規約を変えるには、区分所有者と議決権の各四分の三以上の多数による決議が必要になる
区分所有のマンションで民泊を考えるとき、いちばん先に見るのは管理規約です。用途地域でも建物の構造でもありません。
規約で禁止されていれば、そこで終わります。逆に、禁止されていないからといって、すぐに始められるわけでもありません。
この記事では、規約の読み方、定めがないときにどうなるか、規約を変えるには何が要るかを整理します。
規約を見るのが、いちばん先
熊本県の添付書類チェックリストは、複数の所有者がいる建物について、専有部分の用途に関する規約の写しを添付するよう求めています。届出の段階で、規約が確認されるということです。
規約に住宅宿泊事業を禁止する定めがあれば、届出はできません。物件を取得する前に、規約を取り寄せて読むところです。売買であれば重要事項説明で示されますが、その前に見ておいたほうが判断が早く済みます。
「専ら住宅として使用する」だけでは決まらない
多くのマンションの規約には、専有部分の用途について「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」という趣旨の条項があります。マンション標準管理規約の第12条に沿ったものです。
住宅宿泊事業は、住宅を使って営む事業です。だから「専ら住宅として使用する」という条項があっても、それだけで禁止されていると言い切ることはできません。
国土交通省は2017年8月29日にマンション標準管理規約を改正し、住宅宿泊事業を可能とする場合と禁止する場合の双方の規定例を示しました。趣旨は分譲マンションにおけるトラブルの防止で、許容するかどうかを規約上明確にしておくことが望ましい、とされています。
つまり、規約に何も書いていないのは「禁止」でも「許容」でもなく、決まっていない状態です。
家主居住型だけ認める、という定め方もある
選択肢は全面禁止と全面許容の二つだけではありません。標準管理規約のコメントには、住宅宿泊事業者が同じマンション内に居住している、いわゆる家主居住型のみを可能とする場合の規定例も示されています。
同じ建物に住んでいる人が営むのであれば、苦情の宛先がはっきりしていて、日常の管理も回りやすい。管理組合としては、そこで線を引く判断がありえます。
相談を受ける側としては、「できるか、できないか」ではなく「どういう形なら通るか」を持って行くほうが話が進みます。
定めがないときは、管理組合に確認する
規約に禁止の定めがない場合、熊本県のチェックリストは、管理組合に住宅宿泊事業を営むことを禁止する意思がないことを確認したことを証する書類を求めています。
確認の取り方は管理組合によります。理事会に諮ってもらう、総会の議題にしてもらう、管理会社を通じて書面で回答をもらう。いずれにしても、こちらの都合では日程が決まりません。
理事会が月に一度、総会が年に一度、という管理組合は珍しくありません。総会を待つことになれば、そこで数か月動きます。届出の工程を組むときは、ここを最初に動かしておきます。
規約を変えるには、四分の三の多数
規約に定めを置く、あるいは既にある定めを変えるには、集会の決議が要ります。建物の区分所有等に関する法律第31条第1項が定めています。
区分所有者の過半数であって議決権の過半数を有するものが出席し、出席した区分所有者およびその議決権の各四分の三以上の多数による決議。
さらに、規約の設定・変更・廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならないとされています。
この後段は、実務で問題になることがあります。すでに届出をして営業している区分所有者がいる状態で、禁止する規約を作ろうとする場合です。特別の影響に当たるかどうかは個別の判断になり、ここは条文だけでは決まりません。
管理組合が慎重になる、実質的な理由
管理組合が民泊に消極的なのは、感情の問題だけではありません。建物の側に理由があります。
一つは消防です。宿泊させる間に家主が不在となり、宿泊室の床面積の合計が50㎡を超える住戸は、消防法の上で宿泊施設として扱われます。そういう住戸が一つでもできると、棟全体が複合用途防火対象物になります。建物に求められる設備の考え方が変わり、共用部分に手を入れることになれば、費用を負担するのは管理組合です。
もう一つは日常の管理です。オートロックの解除、鍵の受け渡し、ごみの出し方、共用部分の使われ方。管理員の手間が増え、他の住戸からの問い合わせも管理組合に来ます。
保険や、建物全体の評価に対する不安を口にされることもあります。これらは規約の条文の外側にある論点ですが、決議の場では効きます。
賃貸マンションなら、規約ではなく承諾
借りている部屋で民泊をするなら、必要なのは賃貸人の承諾です。熊本県のチェックリストは、届出者が賃借人であれば賃貸人の転貸承諾書、転借人であれば賃貸人と転貸人の承諾書を求めています。共有物件であれば共有者全員の承諾が要ります。
ただし、賃貸で借りている部屋が区分所有建物の中にあるなら、規約も見ることになります。賃貸人の承諾があっても、規約で禁止されていれば営めません。二つを別に確かめます。
始めたあとに、規約が変わったら
規約は、集会の決議で変わります。届出をして営業を始めたあとに、禁止する定めが置かれることもありえます。
その場合、届出そのものは残っていても、規約に反する状態になります。事業を続けることは難しくなり、廃業を届け出ることになります。
これは制度の側の話ではなく、建物の中の合意の話です。始める前に、近隣の住戸との関係を作っておくかどうかで、その後が変わります。説明を尽くしたうえで始めたのか、黙って始めたのかは、決議の場に出ます。
- 管理規約を取り寄せて、専有部分の用途に関する条項を読んだ
- 住宅宿泊事業を明示的に禁止する定めがあるかを確認した
- 家主居住型に限って認める定めがないかを確認した
- 定めがない場合、管理組合に確認を取る段取りと日程を立てた
- 理事会と総会の開催時期を確認した
- 使用細則に、鍵やごみに関する定めがないかを確認した
- 棟全体の消防上の用途が変わりうることを、管理組合に説明した
- 賃借している場合、賃貸人の承諾と規約の両方を確認した
- 近隣の住戸への説明を、届出の前に行った
まとめ
- 「専ら住宅として使用する」という規約だけでは、住宅宿泊事業の可否は決まらない
- 国は2017年8月に標準管理規約を改正し、可能とする場合と禁止する場合の規定例を示した。家主居住型のみ認める例もある
- 定めがない場合、届出には管理組合が禁止する意思を持たないことの確認書類が要る
- 規約の設定・変更は、出席した区分所有者と議決権の各四分の三以上の多数による決議
- 管理組合が慎重になるのは、棟全体の消防上の用途が変わることと、日常の管理の負担が理由になっている
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