民泊の届出に必要な書類 ── 何を、どこから集めるか
- 提出は民泊制度運営システムから。熊本県の手引きは開始する日の2週間前までとしている
- 空き家でつまずくのは「家屋の種類を証する書類」。住んでいない家は、募集か随時居住のどちらかを示すことになる
- 登記名義が亡くなった方のままだと、相続の書類と所有権移転登記が要る。ここで数か月動く
- 熊本県は周辺住民へ説明した記録と、位置関係の地図を添付書類として求めている
民泊の届出は許可ではありません。要件を満たしていれば受理されます。それでも実務の手間はここに集まります。
集める書類の多くは、自分の手元にないものです。法務局、市役所、消防、管理組合、そして隣近所。どこに何を頼むかで、かかる時間が変わります。
この記事では、熊本県が公開しているチェックリストと手引きに沿って、何をどこから集めるのかを整理します。
提出は、民泊制度運営システムから
熊本県の事務処理要領は、民泊制度運営システムでの提出を基本とし、システムを活用できない場合に限り郵送や持参でも提出できる、としています。
手引きは、届出の期限を住宅宿泊事業を開始する日の2週間前までとしています。これは書類が揃ってからの2週間ではありません。不備があればそこから直すことになるので、実際にはもっと前から動くことになります。
届出が受理されると、県から標識が交付されます。手引きは交付まで2週間程度としています。標識は掲示が義務なので、営業開始日から逆算すると、ここも待ち時間として入ってきます。
届出者について集めるもの
個人か法人かで変わります。いずれも欠格要件に当たらないことを示すためのものです。
| 集めるもの | 取得先 | |
|---|---|---|
| 個人 | 届出者および法定代理人の身分証明書 | 本籍地の市町村 |
| 法人 | 定款または寄付行為、登記事項証明書、役員の身分証明書 | 法務局、本籍地の市町村 |
| 共通 | 欠格要件に該当しない旨の誓約書 | 県の様式 |
身分証明書は運転免許証のことではありません。破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者でないことなどを証明する、本籍地の市町村が発行する書類です。ここは取り違えが起きます。
添付書類は、原則として届出日前3か月以内に発行されたものとされています。集めるのが早すぎても使えません。
建物について集めるもの
届出住宅の登記事項証明書を添付します。法務局で取ります。登記情報提供サービスの照会番号でも差し支えないとされています。
空き家では、これがいちばん多い足止めです。
熊本県のチェックリストは、所有者が死亡している場合について、相続関係の書類、相続人の承諾書、そして所有権移転登記が必要としています。相続登記を済ませてからでないと、届出まで進めません。
相続人が複数いて、遠方にいて、まだ話がついていない。そういう状態から始めると、届出は数か月先になります。物件の話より先に、登記を確認するところです。
図面も添付します。台所・浴室・便所・洗面設備の位置、間取りと出入口、各階の別、各部分の床面積、そして安全措置の内容。非常用照明器具の位置なども記載します。手書きでも構いませんが、寸法と面積が要るので、実測が必要になることがあります。
安全措置については、県の様式でチェックリストを別に提出します。
「家屋の種類を証する書類」でつまずく
法律上の「住宅」は、現に人の生活の本拠として使用されている家屋、入居者の募集が行われている家屋、随時その所有者等の居住の用に供されている家屋のいずれかです。空き家は、一つめには当たりません。
そこで、二つめか三つめであることを書類で示すことになります。
入居者の募集が行われている家屋。賃貸や売却の広告の写し、募集サイトの画面の写しなどを添付します。実際に募集をかけている必要があります。
随時その所有者等の居住の用に供されている家屋。自分で使っていることを示すものとして、熊本県のチェックリストはレシートや往復の領収書などを挙げています。年に数回でも使っている実態があるかどうかです。
長く誰も立ち寄っていない家は、どちらにも当てはまらないことがあります。その場合は先に実態を作るか、旅館業の側で検討することになります。
借りている場合、マンションの場合
自分が所有者でないなら、承諾が要ります。賃借人であれば賃貸人の転貸承諾書、転借人であれば賃貸人と転貸人の承諾書。共有物件であれば共有者全員の承諾が必要です。
区分所有の建物であれば、管理規約の写しを添付します。規約に住宅宿泊事業を禁止する定めがあれば、そこで終わります。
規約に定めがない場合は、管理組合に禁止する意思がないことを確認した記録を添付することになります。理事会に諮ってもらう、総会の議題にしてもらう、といった手順が要るので、日数を見ておきます。
消防法令適合通知書は、先に取る
消防法令適合通知書の写しは、必須の添付書類です。つまり消防が終わっていなければ、届出そのものができません。
熊本県の手引きは、管轄の地区消防組合等に相談したうえで交付を受けるよう案内しています。申請のときの所在地は、登記事項証明書に記載されたもので書きます。
必要な消防用設備は建物の規模と使い方で変わり、工事が要ることもあります。ここが工程のいちばん長いところになりがちなので、物件を決めた時点で消防に相談しておくほうが早く済みます。
熊本県は、近隣への説明の記録を求めている
熊本県のチェックリストには、周辺住民等へ説明を行ったことを記録した書類の写しと、位置関係を表示した地図が挙げられています。
あわせて、周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項を宿泊者に説明する書類を、日本語と外国語で各1部提出します。ごみの出し方、騒音、駐車。宿泊者に渡すものが、届出の段階で要ります。
近隣への説明は、法律の条文に書かれた添付書類ではありません。自治体の運用として求められているものです。他県の解説にはこの項目が出てこないことがあるので、そこだけを見て準備すると足りません。
出したあとに、続くもの
届出は一度で終わりますが、義務は続きます。
- 登記名義が現在の所有者になっているかを確認した
- 相続が未了であれば、相続登記の見通しを立てた
- 「家屋の種類を証する書類」を、募集か随時居住のどちらで示すか決めた
- 賃借・転借であれば、承諾書を取れる見通しを立てた
- 区分所有であれば、規約を確認し、定めがなければ管理組合に確認する段取りをした
- 消防に相談し、必要な設備と工期を把握した
- 周辺住民への説明と、その記録・地図を用意した
- 宿泊者に渡す説明書類を、日本語と外国語で用意した
- 添付書類が届出日前3か月以内の発行になるよう、取得の順番を決めた
- 標識の交付までの日数を、営業開始日から逆算した
届出後は、変更があった日から30日以内に変更届、廃業等の日から30日以内に廃業届。そして定期報告が、偶数月の15日までに前2か月分です。熊本市内であれば、これとは別に宿泊税の申告納入が毎月あります。
まとめ
- 提出は民泊制度運営システムから。熊本県の手引きは開始する日の2週間前までとしている
- 身分証明書は本籍地の市町村が発行するもの。添付書類は原則3か月以内の発行
- 空き家では「家屋の種類を証する書類」と相続登記でつまずく。物件より先に登記を見る
- 消防法令適合通知書が必須なので、消防が終わるまで届出はできない
- 熊本県は周辺住民への説明の記録と位置関係の地図を求めている。法定の書類ではなく、自治体の運用
熊本県・熊本市の住宅宿泊事業(民泊)の届出、旅館業の許可申請。行政書士 村上事務所(熊本市東区)が承っています。
