何代も前の名義のままの土地 ── 相続人が増えた土地をたたむ順序

この記事の要点
  • 祖父・曾祖父の名義のままの土地にも、相続登記の義務がかかる。過去の相続も対象になっている
  • 相続人は代を経るごとに増える。一人でも欠けると遺産分割ができない
  • 令和六年三月から戸籍の広域交付が始まり、最寄りの窓口でまとめて請求できるようになった
  • 法定相続情報一覧図を一枚作れば、以降の手続きで戸籍の束を持ち歩かなくてよい
  • 全員が揃わなくても、相続人申告登記で自分の義務だけは止められる

祖父の名義のままになっている土地がある。父の代でも手をつけなかったし、これまで何も起きなかった。だからこのままでよい。そう思われるかもしれません。

そうではなくなりました。過去に起きた相続にも登記の義務がかかるようになり、そして相続人は毎年増えています。人数が増えれば増えるほど、たたむのは難しくなります。

この記事は、何代も前の名義のままになっている土地を、どういう順序で整理していくかを示したものです。

過去の相続にも、義務がかかる

二〇二四年四月一日から、相続で不動産を取得した人に登記の義務がつきました。ここで見落とされやすいのが、義務化より前に起きた相続も対象になるという点です。何十年も前に亡くなった祖父の名義のままの土地も、この対象に入ります。

期限は、施行日と、要件を満たした日のいずれか遅い日から三年です。詳しくは相続した土地で最初にやることにまとめています。

住所と氏名の変更登記も、義務になりました

令和八年四月一日から、所有権の登記名義人の住所や氏名が変わったときは、変更から二年以内に登記の申請をすることが義務づけられています。

古い土地でとくに問題になるのが、この点です。名義人の住所が何十年も前のままで、いまの住所とつながらない。施行より前に変わっていた場合も対象で、令和十年三月三十一日までに登記する必要があります。正当な理由なく怠ると過料の対象になります。あわせて確認してください。

相続人は、放っておくと増える

祖父が亡くなったとき、相続人は三人だったとします。遺産分割をしないまま、その三人のうち一人が亡くなれば、その人の相続人が枝分かれして加わります。これを繰り返すのが数次相続です。

枝は減りません。増えるだけです。三人だった相続人が十人になり、二十人になり、三十人を超える。しかも増える速度は、代を経るほど速くなります。分母が増えれば、亡くなる人の数も増えるからです。

遺産分割の協議は、相続人全員が参加しなければ成立しません。一人でも欠ければ無効です。面識のない、住所も知らない親族が三十人いる状態で、全員から署名をもらう。これが、放置した土地の実際の姿です。

まず、何人いるかを確定させる

順序として最初にやるのは、相続人が誰かを確定させることです。土地の話は、そのあとです。

必要になるのは戸籍です。亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を、途切れなく遡って集めます。転籍していれば、その前の本籍地にも請求します。そして数次相続では、これを亡くなった相続人それぞれについて繰り返すことになります。作業量は人数分ではなく、代の数だけ掛け算で増えます。

戸籍の広域交付が始まっています

令和六年三月一日から、本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍謄本をまとめて請求できるようになりました。全国に散らばった本籍地へ一つずつ郵送で請求していた作業が、最寄りの窓口で済むことがあります。

ただし制限があります。取れるのは本人と、配偶者、直系尊属、直系卑属のものだけで、兄弟姉妹の戸籍は取れません。窓口に本人が出向く必要があり、郵送や代理人による請求はできません。戸籍の附票や一部事項証明書も対象外です。数次相続では兄弟姉妹をたどる場面が必ず出てくるので、これだけで全部が揃うわけではないと考えておいてください。

法定相続情報一覧図を作る

戸籍が揃ったら、法定相続情報一覧図を作ることをおすすめします。

集めた戸籍一式と、相続関係を書いた図を法務局に提出すると、内容を確認したうえで、認証文の付いた写しを交付してもらえます。必要な通数を出してもらえます。

これがあると、以降の手続きで分厚い戸籍の束を持ち歩かなくて済みます。登記、金融機関、税の申告と、提出先が複数ある場合に効きます。相続人が多いほど、戸籍の束も厚くなるので、恩恵は大きくなります。作成は行政書士が担う部分です。

どの土地があるかも、同時に確かめる

相続人の確定と並行して、対象となる土地を洗い出します。

二〇二六年二月から、法務局に請求すると、亡くなった方が登記名義人になっている不動産を全国から検索して一覧にしてくれる制度が始まりました。

古い名義ほど、この証明書に出てきません

この証明書は、請求書に書いた氏名・住所と、登記簿上の氏名・住所を突き合わせて検索します。

祖父や曾祖父の名義のままで、登記されている住所が明治や大正のものであれば、一致しません。古い名義の土地を探すという、いちばん必要な場面でいちばん使いにくいのが実情です。市町村の名寄帳、固定資産税の課税明細、そして公図を広めに取ることで、地道に突き合わせるしかありません。

全員が揃わないときの手当て

相続人が確定しても、全員の同意が得られるとは限りません。連絡がつかない人、応じない人、そもそも所在がわからない人が出ます。

状況 使える手当て
期限に間に合わない 相続人申告登記。単独で申し出れば、その人の登記義務は果たしたことになる。ただし売ることも担保に入れることもできない
話し合いが長引いている 相続開始から十年を過ぎると、原則として法定相続分で分けることになる
所在がわからない相続人がいる 家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる
相続人がいない 家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる
所有者が分からない土地が隣にある 裁判所の決定で管理人を選ぶ制度が設けられている

いずれも裁判所の手続きが絡み、時間がかかります。まず自分の義務を止め、そのうえで腰を据えて進める。この二段構えで考えてください。

順序を間違えない

やることは多いのですが、順序は決まっています。

  1. 相続人を確定させる ── 戸籍を集め、法定相続情報一覧図にまとめる
  2. 土地を確定させる ── 名寄帳、課税明細、公図を突き合わせる
  3. 現況と境界を確かめる ── 現地に立ち、隣接地の状況を見る
  4. 分け方を決める ── 共有にしない。分けるなら分筆できるかを先に確かめる
  5. 登記する

三番目を飛ばしがちですが、ここが後戻りの原因になります。隣の土地も代替わりしていて、境界の立会いができる人がいなくなっていることが多いからです。境界の考え方は境界がわからない土地を相続した、分け方は兄弟で共有になった土地で扱っています。

先延ばしにすると、どうなるか

いま手をつけない選択もあります。ただし、失うものがはっきりしています。

相続人がさらに増えます。いま連絡が取れる方が亡くなれば、その分だけ枝が増えます。境界を知る人がいなくなります。隣接地の側も同じ速度で代替わりしています。売る機会を逃します。名義が整っていない土地は、買い手が現れても契約に進めません。

頼む先を分けておきます。戸籍の収集、法定相続情報一覧図、遺産分割協議書の作成は行政書士。登記の申請は司法書士。境界の確認と測量、分筆は土地家屋調査士。相続税は税理士。家庭裁判所の手続きが争いに発展した場合は弁護士です。

古い名義の土地を整理するときの確認
  • 登記事項証明書を取り、名義人が誰の代なのかを確かめた
  • 名義人の登記上の住所が、いつの時点のものかを見た
  • 戸籍を遡り、どこまで判明したかを記録に残した
  • 広域交付で取れる範囲と、個別に請求が要る範囲を切り分けた
  • 法定相続情報一覧図を作った。または作る段取りをつけた
  • 名寄帳・課税明細・公図を突き合わせ、抜けている土地がないか確かめた
  • 連絡が取れない相続人、所在がわからない相続人がいないかを把握した
  • 三年の期限に間に合うか、相続人申告登記が要るかを判断した

まとめ

  • 過去の相続にも登記の義務がかかる。祖父名義のままの土地も対象になっている
  • 住所・氏名の変更登記も令和八年四月から義務。施行前の変更にも期限がある
  • 相続人は代を経るごとに増え、増える速度も上がる。まず何人いるかを確定させる
  • 広域交付と法定相続情報一覧図で、戸籍の作業はかなり軽くなる。ただし全部は賄えない
  • 全員が揃わなくても相続人申告登記で義務は止まる。止めたうえで腰を据えて進める
戸籍の収集と相続人の確定、お引き受けしています。

行政書士 村上事務所では、行政書士と土地家屋調査士の両方の立場から、相続した土地の調査をお受けしています。戸籍を遡っての相続人の確定、法定相続情報一覧図の作成、遺産分割協議書の作成、土地の一覧と現地・境界の確認まで、一つの窓口で進められます。
登記の申請は司法書士、相続税は税理士が担当する部分ですので、必要に応じてご紹介します。
電話 096-285-3993(平日 10:00〜17:00)/ murakami@mkensetu.jp

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