航空写真で土地の履歴を読む ── 年代のそろえ方と、見るべきもの

この記事の要点
  • 登記が「いつまでに」を示し、航空写真が「いつから」を示す
  • 戦後すぐの写真は米軍が撮ったもの。工場の姿が残っている
  • 画面で見るのと、報告書に載せるのは別の手続
  • 写真から言えるのは形まで。中で何を使っていたかは分からない

「航空写真を見ましたが、昔から空き地でした」──その写真は、何年のものでしょうか。

航空写真は数年に一度しか撮られていません。二枚のあいだに建って、壊されたものは写りません。年代をそろえずに見ると、いちばん重い時期を飛ばします。

この記事では、どこで手に入れ、どう年代をそろえ、何を見るかを整理します。

何が見えて、何が見えないか

航空写真が答えるのは、ひとつの問いだけです。その年、そこに何が建っていたか。

登記記録や旧土地台帳は「いつまでに変わっていたか」の上限を示します。写真は、その手前で「この年にはもうあった」「この年にはまだ無かった」を示します。二つで挟んで、はじめて年が定まります。

建物の形から、中身を決めない

写真から読めるのは、屋根の形と敷地の使われ方までです。

のこぎり屋根が写っていれば工場だった蓋然性は高い。しかし何を製造し、何を使っていたかは、写真からは分かりません。

そこから先は住宅地図の屋号、登記記録の法人名、行政庁への届出の照会です。フェーズⅠは資料調査であり、汚染の有無を証明するものではありません。

どこで手に入るか

国土地理院が公開しているものが軸になります。ただし入口が二つあり、役割が違います。

入口 できること
地理院地図 年代別の写真を画面上で切り替えて見る。あたりを付ける段階に向く
地図・空中写真閲覧サービス 撮影された一枚ごとに探し、謄本・抄本の交付を申請できる
県・市の航空写真 地理院にない年代・縮尺が出てくることがある。都市計画や下水道の部署が持っている

閲覧の範囲、交付の手数料、申請の方法は変わりますので、着手のときに現在の案内で確かめてください。

画面で見るのと、報告書に載せるのは別

調べる段階は画面で足ります。しかし報告書に添えるなら、出所のはっきりした一枚が要ります。

「いつ、誰が撮った、どの写真か」を書けない画像は、資料になりません。後から誰かが同じものに当たれることが、資料調査の書面としての条件です。

使う写真が決まったら、コース番号や写真番号まで控えておきます。

年代をそろえる

公開されている写真は、おおむね次の区切りで存在します。

年代 性格
昭和10年代 数が少ない。戦前の工場を追うとき
昭和20年代 米軍が撮影したもの。全国的に残っている
昭和30〜40年代 高度成長期。工場と造成がいちばん動く時期
昭和50年代以降 数年おきに撮られている。解像度も上がる
平成以降 年度ごとの写真が増える

どこまでさかのぼるか。国の用地取得の実務では、昭和40年代までさかのぼり、周辺に軍需工場があった形跡があれば昭和初期まで戻る、という要領が置かれている例があります。ひとつの目安になります。

一枚も飛ばさない

年代の間隔が空くほど、見落としが増えます。

昭和30年代の写真と昭和50年代の写真しか見ていないと、その二十年のあいだに建って壊されたものは、履歴から丸ごと消えます。

入手できる年代はすべて並べ、見なかった年代があるなら「この年代の写真は入手できなかった」と報告書に書きます。

撮影年は「その日」の記録

写真に付いている年は、撮影された日の状態です。その年の初めから終わりまでを保証するものではありません。

季節も揃いません。落葉期に撮られた写真は地表がよく見え、夏の写真は樹冠に隠れます。同じ土地でも、季節が違えば見えるものが違います。

影も手がかりです。長い影が出ていれば、建物の高さや煙突の存在が読めます。逆に、影で潰れて何も見えない部分が出ます。

縮尺で、見えるものが変わる

航空写真は撮影の高度によって縮尺が違います。広い範囲を一枚に収めた写真ほど、細かいものは写りません。

建物の棟の数までは読めても、屋根の形までは分からない。同じ年代でも、縮尺の違う写真が複数あることがあります。

「その年には何も無かった」と書く前に、細かい縮尺の一枚が別にないかを確かめます。

何を見るか

漫然と眺めても何も出てきません。見る対象を決めて追います。

建物の形

のこぎり屋根は工場の典型です。北向きの採光を並べた形で、繊維、金属加工、機械にわたって使われました。

長い切妻の棟が並んでいれば倉庫や作業場。円い影は、タンクかサイロです。細い直立の影は煙突。これらは戦後の写真でも十分に読み取れます。

地表の色と質感

舗装されている面と、土のままの面は、写真上の明るさが違います。白っぽく均された広い面は、資材置場か、造成直後の更地です。

黒く不定形なしみは、油や水の溜まりであることがあります。整然と区切られた矩形の水面は、沈殿池や貯水池の可能性があります。

水の跡

いまは無い水路や池が写っていることがあります。埋め立てられた水面は、地歴調査でもっとも重い履歴のひとつです。

登記の側から同じことを追う方法は地目の変更時期が示すものにまとめてあります。写真と地目、両方から水面の消えた年を挟みます。

対象地の外側

航空写真の利点は、隣も一緒に写っていることです。登記記録は一筆ずつしか追えませんが、写真は敷地の外を同時に見せます。

隣接地に工場があった。上流側に事業所があった。対象地そのものは畑のままでも、隣から来る筋は残ります。周辺の状況は、対象地と同じ手順で年代を並べて見ます。

変化の瞬間を挟む

並べた写真を、前後で比べます。見るのは変化した年です。

写真上の変化 疑うこと
更地になった 建物の解体。滅失した建物の登記記録を当たる
地表が均された 造成。入れた土の由来を問う
水面が消えた 埋立て。何で埋めたか
建物が現れた 操業の開始。住宅地図で屋号を追う
敷地の区画が変わった 分筆・合筆。登記の表題部と突き合わせる

解体や滅失の記録は閉鎖登記簿で分かることに、所有者の遍歴は旧土地台帳の読み方に整理があります。

報告書にどう載せるか

読み取った内容は、年表の一行になります。「昭和◯年の写真では、対象地の北側に切妻の建物が二棟」のように、見えたものだけを書きます。

そして判読には限界があることを、はじめに書いておきます。解像度、季節、影。読み取れなかった部分は「読み取れなかった」と残します。見えなかったことと、無かったことは違います。

写真ごとに、撮影年・撮影主体・整理番号を添えます。調査全体の位置づけは土壌汚染対策法を、取引の場面で求められる範囲はエンジニアリングレポートを参照してください。

航空写真を読むときの確認
  • 入手できる年代をすべて並べた
  • 入手できなかった年代を記録した
  • のこぎり屋根・煙突・タンクの有無を見た
  • 地表の色の違い(舗装・更地・野積み)を見た
  • いまは無い水面・水路が写っていないか確かめた
  • 変化した年を特定し、登記側の記録と突き合わせた
  • 報告書に載せる写真の撮影年・撮影主体・番号を控えた
  • 判読の限界を報告書に書いた

まとめ

  • 航空写真は「いつから」を示す。登記の「いつまでに」と挟んで年を定める
  • 入口は二つ。画面で見る地理院地図と、一枚ごとに探して謄本を取れる閲覧サービス
  • 入手できる年代はすべて並べる。飛ばした年代に、建って壊されたものが隠れる
  • 見るのは屋根の形、地表の色、水の跡。そして前後の写真で変化した年
  • 読めるのは形まで。中で何を使っていたかは、住宅地図と登記と行政照会で追う
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