開発許可の申請書類 ── 図面は何を示すためにあるか

この記事の要点
  • 申請書類は「立地を説明するもの」と「技術基準を満たすことを示すもの」の二系統でできている
  • 図面はそれぞれ審査官の特定の問いに答えるためにある。目的がわかれば描く内容が決まる
  • 差し戻しの多くは、同意書・承諾書という「他人に依存する書類」で起きる
  • 1ヘクタール以上の開発では、設計者に資格が要る

開発許可の申請書は、一枚の様式と、その後ろに続く分厚い添付図書でできています。

この図書の束を「役所に出すもの」として作ると、量ばかり増えて、要点が抜けます。それぞれの図面には、答えるべき問いがあります。

問いがわかれば、何を描き、何を描かなくてよいかが決まります。

書類は、二系統に分かれる

立地の説明と、技術の証明

立地を説明する書類は、34条の話です。市街化調整区域で、なぜここに建ててよいのかを示します。申請人の資格を証する書類、事業の必要性を説明する書類などが、ここに入ります。

技術基準を満たすことを示す書類は、33条の話です。道路、排水、給水、防災。設計図書のほとんどが、こちらに属します。

市街化区域の案件では、前者がほとんど要りません。調整区域の案件で書類が一気に増えるのは、このためです。

設計図書 ── 図面ごとの問い

図面 答えている問い
位置図 どこにあるか。周辺の市街地・道路との関係は
区域図 開発区域の境はどこか。面積はいくらか
現況図 いまの地形・地目・工作物・既存の道路と水路はどうなっているか
土地利用計画図 区画をどう割り、何をどこに配置するか
造成計画平面図 どこをどれだけ切り、どれだけ盛るか
造成計画断面図 高低差をどう処理するか。擁壁はどこに立つか
排水施設計画平面図 雨水と汚水は、どこを通ってどこへ出るか
給水施設計画平面図 水はどこから引くか。既存管の口径で足りるか
道路の平面・縦断・横断図 幅員・勾配・構造は基準を満たすか
擁壁の断面図・構造計算 その高さの擁壁が、その構造で保つか
求積図 面積の根拠。区域面積・区画ごとの面積
区域の線が、すべての起点になる

開発区域をどこで囲むかは、単なる作図ではありません。面積要件、公園の要否、技術基準の適用、費用——ほぼすべてがここで決まります。

そして、一体として行われる開発を人為的に分割することはできません。同じ事業者が、隣接する土地を時期をずらして開発する場合、一体の開発とみなされることがあります。区域の線を引く前に、事業の全体像を窓口と共有しておくことをお勧めします。

他人に依存する書類が、工程を握る

設計図書は、自分たちの手で進められます。しかし申請には、相手の判断を待つしかない書類が含まれています。ここが工程の急所です。

32条の同意・協議を証する書面

開発行為に関係する公共施設の管理者の同意と、新たに設置される公共施設を管理することになる者との協議。これが、開発許可の最大の関門です。

道路管理者、水路の管理者、下水道管理者、それぞれに窓口が分かれます。詳しくは開発許可申請の実務で扱っています。

土地の権利者の同意

33条は、開発区域内の土地について相当数の権利者の同意を得ていることを求めています。共有地、相続未登記の土地、地役権や賃借権が付いた土地。権利関係の整理に、思わぬ時間がかかることがあります。

先に着手すべきもの

順序としては、次のものを早い段階で動かします。

  • 権利関係の調査 ── 登記記録、相続の有無、共有者の所在
  • 32条の事前協議 ── 管理者ごとに窓口が違うため、並行して
  • 農地転用・農振除外 ── 農振除外は年に数回しか受け付けない自治体がある

設計が固まってから同意を取りに行くと、設計のやり直しが発生します。同意を取りながら設計を固めるのが、実務の順序です。

事前協議に、最初に持っていくもの

設計図書は、事前協議が進むにつれて形になっていきます。最初から完成品を持ち込む必要はありません。むしろ、作り込んでから行くと、直す量が増えます。

最初の協議で必要なのは、次の三点です。

何のために
区域図(案) どこを開発区域とするか。面積要件と一体開発の判断がここで決まる
土地利用計画図(案) 何をどこに置くか。道路と排水の骨格が見えればよい
現況図・写真 高低差、既存の水路と道路、隣地との関係

この段階で確かめるのは、「この骨格で進めてよいか」だけです。擁壁の構造計算も、求積の詰めも、後で構いません。

図面と現地が食い違うとき

実務で頻繁に起きるのが、公図と現況が合わないという状況です。

  • 水路や里道が、公図にはあるが現地にない
  • 逆に、現地にある通路が公図にない
  • 登記面積と実測面積が大きく違う
  • 隣地との境界が確定していない

いずれも放置したまま設計を進めると、同意の段階で止まります。水路や里道が絡む場合は、その用途廃止や付替えの手続きが別に要ることもあり、工程への影響が大きくなります。

境界が未確定なら、確定測量を先に手配します。境界と権利関係は、いちばん早く着手して、いちばん遅く終わる作業です。

設計者の資格

都市計画法31条は、一定規模以上の開発行為について、設計図書を作成する者の資格を定めています。

対象は1ヘクタール以上の開発行為で、政令に定める資格を持つ者が設計にあたる必要があります。実務では、規模が1ヘクタールに近づいてきたら、設計体制を先に確かめます。申請の直前に資格の問題が出ると、工程が大きく狂います。

誰が、どこまで作るか

開発許可の申請図書は、一人で作るものではありません。設計事務所、測量業者、施工会社、そして行政書士。分担があいまいなまま進むと、抜けるのは決まって「誰の仕事でもない部分」です。

作業 主に担うところ
境界確定・求積 土地家屋調査士・測量業者
造成設計・構造計算 設計事務所
排水計算・道路設計 設計事務所
権利関係の調査 抜けやすい。登記記録と現地の突合せ
32条の協議 抜けやすい。管理者ごとに窓口が違う
農地転用・農振除外 抜けやすい。開発とは別の窓口・別の日程
申請書の取りまとめ 行政書士

下三つは、設計にも施工にも属さないため、宙に浮きやすい作業です。最初の打合せで、誰がどこまで持つかを紙に書いて共有しておくと、後の空白が減ります。

差し戻しは、どこで起きるか

原因 避け方
区域の設定 一体開発とみなされないか、事前に窓口と共有する
排水の放流先 下流の管理者の同意を、設計と並行して取る
求積の不一致 登記面積と実測面積の差を、先に説明できるようにする
権利者の同意漏れ 相続未登記・共有の有無を、最初に登記記録で洗う
古い様式の使用 申請前に、自治体の最新の手引きと様式を取り直す
申請書類をそろえる前に
  • 管轄する自治体の最新の手引きと様式を入手した
  • 市街化調整区域なら、立地を説明する書類の要否を確かめた
  • 開発区域の線を、事業の全体像とともに窓口と共有した
  • 一体開発とみなされる可能性を確かめた
  • 登記記録で、共有者と相続未登記の有無を洗った
  • 32条の協議先を、管理者ごとに一覧にした
  • 排水の放流先と、その管理者を特定した
  • 農地転用・農振除外の受付時期を確かめた
  • 1ヘクタール以上なら、設計者の資格を確かめた
  • 求積の根拠(登記面積と実測面積)を整理した
  • 各図面が、どの問いに答えるものかを説明できる

まとめ

  • 申請書類は、立地を説明するものと技術基準を示すものの二系統でできている
  • 図面にはそれぞれ答えるべき問いがあり、それがわかれば描く内容が決まる
  • 開発区域の線の引き方が、面積要件から費用までを決める
  • 工程を握るのは、同意書・承諾書という他人に依存する書類である
  • 1ヘクタール以上の開発では、設計者の資格が問われる
開発許可の申請、お引き受けしています。

熊本県・熊本市の開発許可申請、農地転用、農振除外。行政書士 村上事務所(熊本市東区)が承っています。

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