都市計画法34条 ── 号ごとに、何が建てられるか
- 34条は「市街化調整区域で例外的に認められるもの」を号ごとに並べた条文。どの号で説明するかを最初に決める
- 号は土地に着目するものと人・事業に着目するものに分かれる
- 11号・12号は条例で区域や用途を定める号。自治体ごとに中身が違う
- 14号は開発審査会の議を経る号。提案基準という運用の型がある
市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域です。原則として、建てられません。
その原則に対して、「これなら認めてよい」という例外を並べたのが34条です。開発許可の審査は、33条の技術基準と34条の立地基準の二本立てで行われますが、調整区域の案件が通るか通らないかは、ほぼ34条で決まります。
設計の前に、どの号で説明するのかを決めておく。順序を逆にすると、図面を引き直すことになります。
号を、二つの系統で捉える
土地に着目する号は、その場所だからこそ認められるもの。周辺の状況や資源との結びつきが理由になります。
人・事業に着目する号は、誰が何のために建てるかが理由になります。こちらは、建てた後に人が変わると問題が起きます。
この区別を意識しておくと、後々の用途変更や売却で困る場面をあらかじめ避けられます。
号ごとの中身
| 号 | 認められるもの |
|---|---|
| 1号 | 周辺の居住者の日常生活に必要な店舗・診療所など |
| 2号 | 鉱物資源・観光資源の有効な利用に必要なもの |
| 3号 | 特別な自然的条件を必要とする事業のためのもの |
| 4号 | 農林水産物の処理・貯蔵・加工に必要なもの |
| 5号 | 特定農山村地域における農林業等活性化基盤施設 |
| 6号 | 中小企業の共同化・集団化のための事業 |
| 7号 | 既存工場に隣接して行う、関連事業のためのもの |
| 8号 | 危険物の貯蔵・処理で、市街化区域で行うことが不適当なもの |
| 8号の2 | 災害の危険がある区域からの移転のためのもの |
| 9号 | 沿道サービス施設(給油所、ドライブインなど)、火薬類製造所 |
| 10号 | 地区計画・集落地区計画の内容に適合するもの |
| 11号 | 条例で指定した区域内で行うもの |
| 12号 | 条例で定めた、市街化を促進するおそれがないと認められるもの |
| 13号 | 線引きの際に自己の土地で事業を行う権利を有していた者が、届出をして行うもの |
| 14号 | 開発審査会の議を経て、支障がないと認められるもの |
実務でよく使う号
1号 ── 日常生活に必要な店舗
周辺の居住者が日常的に使う店舗や診療所です。ここでの争点は、たいてい商圏の説明になります。誰が使う施設なのかを、人口と距離で示せるかどうか。
広域から集客する業態は、この号では通りません。「調整区域に店を出したい」という相談の多くは、ここで方向転換が必要になります。
9号 ── 沿道サービス
幹線道路の沿道で、通行する車両に対してサービスを提供する施設です。給油所、ドライブイン、自動車修理工場などが該当します。
どの道路の沿道なら認められるかは、自治体が路線を指定していることが多いです。交通量や道路の種別で線が引かれます。
「国道沿いだから大丈夫」とは限りません。路線ごとの指定を、先に確かめてください。
11号・12号 ── 条例に委ねられた号
この二つは、条文だけを読んでも中身がわかりません。市町村の条例を見に行く必要があります。
| 内容 | |
|---|---|
| 11号 | 市街化区域に隣接・近接し、建築物が連たんしている区域などを条例で指定し、その中での開発を認めるもの |
| 12号 | 区域ではなく、開発行為の内容(用途・目的)を条例で定めるもの。分家住宅などがここに置かれることがある |
熊本市の集落内開発制度も、この条例に基づく仕組みです。集落内開発制度で詳しく扱っています。
令和2年の改正により、11号・12号の条例で定める区域から、災害レッドゾーンが原則として除外されました。
対象となるのは、災害危険区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害特別警戒区域などです。従来は条例区域内だった土地が、いまは対象外になっていることがあります。古い区域図で判断しないでください。
13号 ── 線引き前からの権利
線引きが行われた時点で、すでにその土地で事業を行う権利を持っていた人のための規定です。届出の期限があり、権利を持っていたことの立証が要ります。年月が経つほど使いにくくなる号です。
14号 ── 開発審査会
1号から13号までのどれにも当てはまらないが、周辺の市街化を促進せず、市街化区域で行うことが困難または著しく不適当と認められるもの。開発審査会の議を経て許可されます。
14号は条文が抽象的なので、多くの都道府県・指定都市が「提案基準」「審査基準」といった名称で、あらかじめ類型を示しています。
分家住宅、既存住宅の建替え、社寺、既存事業所の拡張などが、この類型に置かれていることがあります。
どの類型に乗せるかで、必要な資料も審査の期間も変わります。そして提案基準は自治体ごとに違い、改定もされます。管轄する許可権者の最新版を、必ず現物で確かめてください。
建てた後も、制限は続く
34条で許可を得るということは、「この理由だから認める」という条件つきで建てているということです。理由が消えれば、建物の使い方も制約を受けます。
農家住宅、分家住宅、既存事業所の拡張——これらは「その人だから認められた」建築物です。
そのため、第三者に売って住まわせる、別の用途で使う、といった場面では、あらためて許可が要ります。用途変更の許可が得られなければ、売却そのものが成立しません。
市街化調整区域の中古住宅が相場より安いことがあるのは、この制約が理由である場合があります。安さの理由を確かめずに買うと、住めない、貸せない、建て替えられない、ということが起こり得ます。
逆に、11号や12号の条例区域のように土地に着目する号で建てられたものは、承継の場面での制約が比較的緩やかです。同じ調整区域の建築物でも、素性によって将来の扱いが変わります。
市街化調整区域の建物を扱うとき、私たちがまず確かめるのは「どの号で、いつ、誰のために建てられたか」です。
手がかりは、開発登録簿、建築確認台帳、登記記録の建築時期、当時の航空写真など。ここが分からないまま売買や設計を進めると、後戻りが大きくなります。
号を選ぶ順序
実務では、次の順で絞ります。
- まず、条例の区域に入っているか(11号・12号)。入っていれば、いちばん道筋が短い
- 次に、用途で当てはまる号があるか(1号・4号・9号など)
- 最後に、14号の提案基準に乗るかを検討する
14号から入ると、審査会の日程に工程全体が縛られます。先に他の号で説明できないかを潰しておくのが、時間の面では有利です。
- どの号で説明するかを、設計に入る前に決めた
- その号が、土地に着目する号か人に着目する号かを理解している
- 11号・12号の条例を、管轄する市町村の現物で確かめた
- 令和2年改正後の区域図で確かめた(災害の区域が除外されている)
- 9号なら、対象となる路線の指定を確かめた
- 1号なら、商圏を人口と距離で説明できる
- 14号なら、提案基準のどの類型に乗るか特定した
- 提案基準の版が最新であることを確かめた
- 建てた後の用途変更・売却の制限を、依頼者に説明した
- 開発審査会の開催時期を、工程表に織り込んだ
号を選び直すことになる、よくある場面
| 当初の見込み | 実際に起きること |
|---|---|
| 11号の条例区域に入っているはず | 災害の区域が除外され、区域から外れていた |
| 9号の沿道サービスでいける | その路線が指定路線ではなかった |
| 1号の日常生活用の店舗 | 広域から集客する業態で、商圏の説明がつかない |
| 14号の提案基準に乗る | 基準が改定され、要件が変わっていた |
四つとも、「以前の案件で通ったから」という前提から生じています。34条をめぐる運用は、条例の改正、提案基準の改定、災害区域の指定によって動きます。案件ごとに、その時点の資料で確かめ直す必要があります。
まとめ
- 34条は、市街化調整区域で例外的に認められるものを号ごとに並べた条文である
- 号は、土地に着目するものと人・事業に着目するものに分かれる
- 11号・12号は条例に委ねられ、自治体ごとに中身が違う
- 令和2年の改正で、条例区域から災害レッドゾーンが原則除外された
- 14号は開発審査会の議を経る号で、提案基準という運用の型がある
