農振除外 ── 申出先と、五つの要件
- 申出先は市町村。農業振興地域整備計画を定めているのは市町村だから
- 除外には五つの要件をすべて満たす必要がある。一つでも欠ければ認められない
- 基盤整備事業の完了から8年を経過していない土地は、原則として除外できない
- 除外はスタートライン。除外されてから、あらためて農地転用の手続きが始まる
「農用地区域です」と分かった時点で、その計画の工程は大きく変わります。農振除外という手続きが、農地転用の前に一つ挟まるためです。
しかもこの手続きは、申請すれば通るものではありません。五つの要件をすべて満たす必要があり、一つでも欠ければ認められません。そして受付は年に一、二回。告示まで一年前後を要することもあります。
この記事では、除外の要件、申出先と手続きの流れ、そして相談者にどう説明するかを扱います。
農用地区域とは
市町村が定める農業振興地域整備計画のなかで、今後おおむね10年以上にわたって農業上の利用を確保すべき土地として定められた区域です。通称「青地」と呼ばれます。
| 農用地区域(青地) | 農用地区域外(白地) | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 農業上の利用を確保すべき土地 | 農振地域内だが農用地区域ではない |
| 農地転用 | 原則不許可 | 農地区分に応じて判断 |
| 転用の前提 | 農振除外が必要 | 不要 |
農振地域に指定されていても、農用地区域でなければ除外の手続きは不要です。まず「青地か白地か」を確認してください。
申出先は市町村
農業振興地域整備計画を定めているのは市町村です。したがって、除外を求める申出も市町村に対して行います。
県の農林水産部門に申請書を持ち込むのではありません。市町村が計画の変更案を作り、その過程で県と協議し、県知事の同意を得るという構造になっています。
窓口を間違えると、そこで時間を失います。市町村の農政担当課に相談してください。
五つの要件
農振法13条2項は、次のすべてを満たす場合に限り、農用地区域から除外できると定めています。
| 要件 | 実務上の意味 | |
|---|---|---|
| 一 | 農用地区域以外の土地をもって代えることが困難 | 白地に代替地がないことを示す必要がある |
| 二 | 農用地の集団化・農作業の効率化その他農業上の効率的・総合的利用に支障を及ぼさない | まとまった農地の真ん中を抜くのは難しい |
| 三 | 効率的・安定的な農業経営を営む者への農用地の利用集積に支障を及ぼさない | 担い手が集積している区域は厳しい |
| 四 | 土地改良施設の機能に支障を及ぼさない | 用水路・排水路・農道への影響 |
| 五 | 農業生産基盤整備事業の工事完了年度の翌年度から8年を経過している | これが最も動かせない |
圃場整備や用排水路の整備など、公共投資が行われた農地は、完了から8年を経過するまで除外できません。
他の四つは説明や計画の工夫で説得できる余地がありますが、この要件は年数の問題なので動かせません。
用地を選ぶ段階で、基盤整備事業の実施履歴と完了年度を市町村で確認してください。8年に満たなければ、その土地は候補から外すという判断になります。
一号(代替性)が実務の中心
五要件のうち、実務でいちばん説明を求められるのが代替性です。「白地に適地があるのに、なぜ青地なのか」を説明できなければ通りません。
説明の材料になるのは、次のような事情です。
- 白地の候補地を実際に検討し、成立しなかった経緯(面積、形状、接道、価格、所有者の意向)
- 既存の施設に隣接している必要がある(増設、一体的な利用)
- 接道条件、インフラの引込み条件
- 事業の性質上、その場所でなければならない理由
「ここが安かったから」は理由になりません。候補地の比較検討を、資料として残しておいてください。
面積の妥当性
要件そのものではありませんが、事業規模に対して面積が妥当かどうかも審査されます。必要以上に広い区域を除外しようとすると、その部分を削るよう指導されます。
手続きの流れ
| 段階 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 事前相談 | 市町村の農政担当課へ。青地か白地か、要件を満たしうるかを確認 | ― |
| 申出 | 年1〜2回の受付期間に提出 | 逃すと半年待ち |
| 市町村の検討 | 要件への適合を審査。農業委員会の意見も | 数か月 |
| 県との事前協議 | 市町村が県と協議 | 数か月 |
| 計画変更案の公告・縦覧 | 30日間の縦覧 | 1か月 |
| 異議申出 | 縦覧期間満了後15日以内 | ― |
| 県知事との協議・同意 | 県の同意を得る | 数か月 |
| 変更の公告 | ここで除外が成立 | ― |
| 農地転用の手続き | ここから始まる | 1〜2か月 |
農振除外が認められても、それだけでは建てられません。除外によって「白地」になっただけであり、そこから農地転用の許可を取る必要があります。
除外は農地転用の前提条件であって、転用の許可ではありません。相談者にはここを明確に伝えてください。「除外が通ったから大丈夫」と受け取られると、後で行き違いになります。
相談者にどう説明するか
期間を、最初に伝える
相談を受けた時点で、着工までにどれだけかかるかを逆算して伝えてください。
| 工程 | 期間の目安 |
|---|---|
| 受付までの待ち | 0〜6か月(受付時期による) |
| 除外の手続き | 6か月〜1年 |
| 農地転用 | 1〜2か月 |
| (開発許可が必要なら) | さらに数か月 |
合計で一年から二年を見込むことになります。「来年の春に着工したい」という相談であれば、その時点で難しいと伝えるべきです。
通らない可能性を伝える
申出をしても、認められないことがあります。「申請すれば通る」という前提で計画を進めさせないでください。
とくに、8年ルールに抵触する場合、担い手への集積が進んでいる区域の場合は、率直に難しいと伝えるほうが親切です。
断定しない
可否を判断するのは市町村と県です。窓口で「これは通ります」と断定しないでください。要件を説明し、該当する可能性の有無までを伝え、市町村の農政担当課につなぎます。
実務でつまずく点
受付時期を逃す
年に一、二回の受付が一般的です。市町村ごとに時期が違います。相談を受けたら、まず次の受付がいつかを確認してください。数週間の違いで、半年変わります。
白地だと思っていたら青地だった
農振地域の指定と農用地区域の指定は別です。「農振地域内だが白地」という土地もあります。市町村の農政担当課で、農用地区域図により確認してください。地図上で色分けされています。
一筆の一部だけ除外する
一筆の農地のうち、必要な部分だけを除外することは可能です。ただし分筆が必要になり、測量と登記の期間が加わります。また、残る部分が農地として使いにくい形になれば、要件二・三の判断に影響します。
県との協議で差し戻される
市町村が認めても、県との協議で修正を求められることがあります。面積の縮小、位置の変更、代替性の説明の補強。その分だけ期間が延びます。
除外後の転用で止まる
除外が済んでも、農地転用の一般基準(資力・信用、転用の確実性、被害防除)を満たさなければ許可されません。除外の段階から、転用の要件も見据えて資料を揃えてください。
- 農振地域内か、農用地区域(青地)かを確認した市町村の農用地区域図で
- 市町村の農政担当課に事前相談した県ではない
- 基盤整備事業の実施履歴と完了年度を確認した8年ルール。動かせない
- 白地に代替地がないことを説明できるか検討した候補地の比較検討を資料に残す
- 周囲の農地の集団性を確認したまとまった農地の中央は難しい
- 担い手への利用集積が進んでいる区域でないか確認した
- 用水路・排水路・農道への影響を確認した
- 事業規模に対して面積が妥当か検討した広すぎると削るよう指導される
- 次の受付時期を確認した年1〜2回。逃すと半年待ち
- 一筆の一部の場合、分筆の期間を工程に加えた
- 除外後に農地転用の手続きが必要であることを相談者に伝えた
- 着工までの所要期間を逆算して伝えた合計で1〜2年
- 通らない可能性があることを伝えた
- 可否を断定せず、市町村の農政担当課につないだ
まとめ
- 申出先は市町村。農業振興地域整備計画を定めているのが市町村だから。
- 除外には五つの要件をすべて満たす必要がある。一つでも欠ければ認められない。
- 基盤整備事業の完了から8年ルールは、交渉の余地がない。用地選定の段階で確認する。
- 実務の中心は代替性の説明。候補地の比較検討を資料として残す。
- 除外はスタートライン。そこから農地転用の手続きが始まる。着工まで一年から二年。
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