用途変更 ── 200㎡を超えるとき、超えなくても残る義務

この記事の要点
  • 届出住宅は建築基準法でも住宅のままなので、民泊は用途変更にならない
  • 旅館業にすると特殊建築物になる。その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えると確認申請が要る
  • 確認申請が要らない規模でも、基準に適合させる義務は残る。手続きが省かれるだけ
  • 用途変更に完了検査はなく、検査済証は交付されない。検査済証のない建物では、先に法適合状況の調査が要る

「用途変更が要りますか」という問いは、民泊の相談でよく出ます。答えは、どの制度で行うかによって変わります。

住宅宿泊事業なら要りません。旅館業なら要ることがあります。そして「要らない」場合でも、建物に何も求められないわけではありません。

この記事では、どこで分かれるのか、確認申請が不要なときに何が残るのか、既存の建物で何がつまずくのかを整理します。

民泊は、用途変更にならない

住宅宿泊事業法第21条は、建築基準法およびこれに基づく命令の規定において「住宅」「長屋」「共同住宅」「寄宿舎」とあるのは届出住宅であるものを含む、と定めています。

住宅を届出住宅として使っても、建築基準法の上では住宅のままです。用途が変わらないので、用途変更の手続きも要りません。

ただし、これは「建築基準法を気にしなくてよい」という意味ではありません。住宅として基準に適合している必要はあります。無断で増築していた、間仕切りを勝手に変えていた、といった事情があれば、そこは別の問題として残ります。

旅館業にすると、特殊建築物になる

旅館業の許可を取って営むなら、その建物は建築基準法別表第一の(い)欄に掲げる用途、つまり特殊建築物になります。一戸建ての住宅からであれば、住宅ではないものに変わることになります。

建築基準法第87条第1項は、建築物の用途を変更して第6条第1項第1号の特殊建築物のいずれかとする場合について、確認の規定などを準用すると定めています。これが用途変更の手続きです。

括弧書きで、政令で指定する類似の用途相互間における変更は除かれています。住宅から旅館への変更は、これには当たりません。

200㎡を超えると、確認申請

準用される第6条第1項第1号は、対象を「別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートルを超えるもの」としています。

この数値は、以前は100㎡でした。2019年6月に施行された改正で200㎡に引き上げられています。小規模な簡易宿所への転用については、確認申請が要らない範囲が広がりました。古い解説には100㎡と書かれているものが残っているので、そこは注意してください。

判定は「その用途に供する部分」の床面積です。建物全体ではありません。一部だけを宿泊に使うのであれば、その部分で見ます。

確認が要らなくても、基準は適用される

ここが誤解の集まるところです。

200㎡以下なら何もしなくてよい、ではない

確認申請という手続きが省かれるだけで、建築基準法の中身が免除されるわけではありません。

用途が旅館になれば、その用途に応じた規定がかかります。内装の制限、非常用の照明装置、排煙、避難の経路、防火区画。どれも建物の使われ方を前提に定められているものです。

手続きがないぶん、誰にも指摘されないまま営業が始まることがあります。それでも適合していなければ違反です。是正を求められるのは、たいてい何かが起きたあとです。

該当するかどうかは、建物ごとの判断になります。特定行政庁または指定確認検査機関に確かめてください。

用途変更に、完了検査はない

用途変更の確認申請を出した場合、工事が終わったあとの扱いが、新築とは違います。

第87条第1項は、検査に関する規定を読み替えて、建築主事等に「届け出なければならない」としています。完了検査を受けるのではなく、工事完了届を出す形です。

そのため、用途変更では検査済証が交付されません。手続きを正しく踏んでも、検査済証という紙は増えません。あとで「検査済証がない」と言われる原因の一つがこれです。売却や融資の場面で、確認済証と工事完了届の控えを求められることになります。

検査済証がない建物で、起きること

古い建物では、そもそも検査済証がないことがあります。確認は受けたが完了検査を受けていない、という状態です。空き家では珍しくありません。

この状態で用途変更の確認申請を出そうとすると、話が止まります。申請にあたっては、現況が建築基準関係規定に適合していることを前提にするからです。それを示す書類がない。

国土交通省のガイドラインに基づく法適合状況調査という道はあります。指定確認検査機関などが図面と現況を突き合わせて、適合の状況を調べるものです。ただし調査には時間がかかり、費用も別に生じます。取得の判断をする前に、検査済証の有無を確かめておくところです。

住宅宿泊事業であれば用途変更に当たらないので、この道を通らずに始められます。ここでも、180日で収めるか通年にするかが、工程と費用を分けます。

既存不適格は、また別の話

建てたときは適法で、その後の法改正で現行の基準に合わなくなった建物を、既存不適格建築物といいます。違反建築物とは違います。

既存不適格の建物を用途変更する場合、どこまで現行の基準に合わせるかについては、緩和の仕組みが用意されています。ただし用途を変えるということは、その建物に求められる安全の水準を変えるということでもあるので、避難に関わる部分などは現行の規定が働きます。

どこまでが緩和され、どこからが求められるのかは、建物の履歴と用途によって変わります。ここは条文を読んで済ませる場面ではありません。図面を持って、特定行政庁または指定確認検査機関に相談することになります。

取得の前に、確かめること

用途変更にまつわる確認は、契約のあとでは遅いものが多く含まれます。

用途変更について確かめること
  • 住宅宿泊事業で行くのか、旅館業で行くのかを決めた
  • 旅館業であれば、その用途に供する部分の床面積の合計を出した
  • 200㎡を超えるかどうかを確認した
  • 200㎡以下でも、用途に応じた規定が適用されることを織り込んだ
  • 確認済証と検査済証の有無を確認した
  • 検査済証がない場合、法適合状況調査に要する期間を工程に入れた
  • 増築や間仕切りの変更など、図面と現況の食い違いを確認した
  • 既存不適格に当たるかどうかを、建物の履歴から確認した
  • 特定行政庁または指定確認検査機関に、図面を持って相談した

まとめ

  • 住宅宿泊事業法第21条により、届出住宅は住宅のまま。民泊は用途変更にならない
  • 旅館業にすると特殊建築物になり、その用途に供する部分が200㎡を超えると確認申請が要る
  • 2019年6月の改正で100㎡から200㎡になった。古い解説の数値に注意する
  • 確認申請が要らない規模でも、用途に応じた規定は適用される。手続きが省かれるだけ
  • 用途変更に完了検査はなく、検査済証は交付されない。検査済証のない建物では先に調査が要る
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