災害レッドゾーンの開発規制 ── 令和4年4月から、何が止まったか
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災害レッドゾーンの開発規制 ── 令和4年4月から、何が止まったか
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この記事の要点
- 令和4年4月1日から、災害レッドゾーンでは自己の業務用の施設も開発できなくなった。許可されるのは自己の居住用住宅だけ
- 災害レッドゾーンは五つの区域。浸水被害防止区域が加わっており、四区域と書かれた資料は古い
- レッドゾーンから安全な場所へ移るための特例(34条8号の2)が新設された
- 34条11号・12号の条例指定区域からも、ハザードエリアを外す方向で見直しが進んでいる。過去の許可事例は判断の根拠にならない
「自分の会社で使う倉庫だから、建てられるはずだ」。市街化調整区域の相談で、いまでもよく聞く言い方です。
かつては、その理解で合っていました。けれども令和4年4月1日から、この前提は変わっています。自己の業務用であっても、災害レッドゾーンにかかる土地では開発が認められなくなりました。
この記事は、そのときに何が変わり、いま何を確かめる必要があるのかを整理したものです。
変わったのは、三つ
改正の内容は、市街化調整区域の開発許可に関して三点にまとめられます。
ひとつめは、災害レッドゾーンでの開発の原則禁止。自己の居住用住宅を除いて、自己の業務用の施設も開発できなくなりました。ふたつめは、安全な場所への移転の後押し。レッドゾーン内にある建築物を区域外へ移す場合の特例が新設されました。みっつめは、条例指定区域からのハザードエリアの除外。34条11号・12号で自治体が指定する区域に、災害ハザードエリアを原則として含めないことが明確化されました。
「令和4年改正」と呼ばれるが、法律は令和2年のもの
根拠となるのは、都市再生特別措置法等の一部を改正する法律(令和2年法律第43号)です。これによって都市計画法が改正されました。公布は令和2年6月、開発許可に関する部分の施行が令和4年4月1日です。
自治体の資料では「令和4年4月1日施行の都市計画法改正」と書かれることが多く、国の資料では「令和2年改正」と呼ばれます。同じものを指しています。
背景にあるのは、水害の激甚化です。堤防などのハード対策だけでは守りきれないという認識を、土地利用のルールの側に組み込んだのがこの改正です。「危険な場所には、できるだけ住まない、建てない」という考え方が、開発許可の条文に持ち込まれました。
災害レッドゾーンは、五つの区域を指す
災害レッドゾーンという言葉は、都市計画法が独自に定義したものではありません。他の法律で指定される、次の五つの区域をまとめてこう呼びます。
災害危険区域(建築基準法39条)、地すべり防止区域(地すべり等防止法3条)、急傾斜地崩壊危険区域(急傾斜地法3条)、土砂災害特別警戒区域(土砂災害防止法9条)、そして浸水被害防止区域(特定都市河川浸水被害防止法56条)です。
「四区域」と書かれた資料は、古い可能性があります。浸水被害防止区域は、特定都市河川浸水被害防止法の改正で新しく設けられたものです。手元の資料が改正前のものでないか、確かめてください。
自己の業務用が、規制の側に移った
効いているのは、法33条1項8号という技術基準です。開発区域の中に災害レッドゾーンを含んではならない、という趣旨の規定です。
改正前、この基準の適用外だったのは「自己の居住用」と「自己の業務用」でした。改正後、適用外として残っているのは自己の居住の用に供する住宅だけです。店舗、事務所、倉庫、工場といった自己の業務用の施設は、レッドゾーンでは原則として開発が認められなくなりました。
「自分の会社で使うから大丈夫」は、通らなくなりました。開発区域の一部でもレッドゾーンにかかっていれば、この基準に触れます。区域の設定そのものを見直すか、計画地を変えるかの判断になります。
抜け出すための許可は、下りる
建て替えても危険は残る
例外的に許可されうる
一方で、規制だけが強まったわけではありません。法34条8号の2という立地基準が新設されました。レッドゾーン内にある建築物を、区域外の安全な場所へ移す場合の特例です。
条文が求めているのは、従前と同一の用途であること、移転であること、移転先が安全な区域であることです。
制度の設計思想がよく表れています。危険な場所から逃げるための許可は下りる。危険な場所に留まるための許可は下りない。用途を変えて建て替える手段として使えるものではありません。
レッドゾーンに次ぐ区域がある
命に危険が及ぶ水深が想定される範囲を含む
特別警戒区域(レッド)の外側にあたる
実務では「イエローゾーン」という言い方もします。法律上の定義ではありませんが、浸水ハザードエリア(洪水浸水想定区域など)と土砂災害警戒区域を指すことが多い言葉です。
これらにはレッドゾーンのような一律の禁止はありません。ただし、自治体の条例や技術基準によって、盛土による嵩上げなどの条件が実質的に付くことがあります。
「レッドでなければ自由」ではありません。どちらの区域であっても、まず最新のハザードマップで確認するところから始めます。
条例で指定した区域も、縮んだ
という前提が崩れる
そして最新のハザードマップ
市街化調整区域で例外的に開発が認められてきた道のひとつが、法34条11号・12号にもとづく条例指定区域です。既存集落の維持などを目的として、自治体が条例で区域を指定してきました。
今回の改正では、この指定区域に災害ハザードエリアを原則として含めてはならないことが明確化されました。レッドゾーンだけでなく、浸水ハザードエリア等も対象になります。既存の指定区域については、各自治体が順次見直しを進めています。
指定区域図だけを見て判断すると、ハザードエリアとの重なりを見落とします。現在の条例と指定区域図、そして最新のハザードマップを、重ねて確認する必要があります。
市街化調整区域での、開発可否の見取り図
縦に区域の種類、横に開発の目的を取ると、改正の影響が1枚で見渡せます。
レッドゾーンでは、自己の居住用住宅だけが残りました。イエローゾーンは、条例と技術基準しだいです。その他の区域では、従前どおり立地基準による判断になります。
「その他の区域」であっても、自由に建てられるわけではありません。市街化調整区域である以上、法34条の各号のいずれかに当たることが必要です。どの号で説明するかは、設計に入る前に決めておく必要があります。
過去の許可事例は、判断の根拠にならない
「自分の土地なら建てられると
役場で言われたことがある」
最新のハザードマップを
重ね合わせて確認する
相談の場でいちばん多い誤解は、この形をとります。「数年前に隣の土地で家が建った」「自分の土地なら建てられると役場で言われたことがある」。
区域も基準も、この数年で動いています。ハザードマップは更新され、条例の指定区域も見直されています。同じ土地でも、数年前の答えといまの答えが違うことがあります。
設計に入る前に、三つ確かめる
順番があります。逆にすると、後から前提が崩れます。
まず区域の確認。対象地が市街化調整区域かどうかと、最新のハザードマップでレッドゾーン・イエローゾーンに該当しないかを見ます。次に条例の確認。34条11号・12号の指定区域に入っているか、その範囲が見直されていないか、技術基準はどうなっているか。そして事前相談。設計図を作る前に、都市計画担当の窓口で特例ルートの該当性を相談し、書面での回答を残します。
土地の売買契約を先に結んでしまうと、この三つを確かめる時間が取れません。決済までの期間で結論が出ないまま、判断を迫られることになります。
まとめ
- 根拠は都市再生特別措置法等の一部を改正する法律(令和2年法律第43号)。開発許可関係の施行は令和4年4月1日
- 災害レッドゾーンは五区域。浸水被害防止区域を含む
- レッドゾーンで残ったのは自己の居住用住宅だけ。自己の業務用も原則不許可になった
- 区域外へ移るための特例(34条8号の2)が新設された。同一用途・移転・安全な区域が条件
- 34条11号・12号の条例指定区域からも、ハザードエリアを外す方向で見直しが進んでいる
市街化調整区域の土地を検討するときの確認
- 最新のハザードマップで、五つのレッドゾーンに該当しないかを確かめた
- 土砂災害警戒区域・洪水浸水想定区域など、イエローゾーンにかかっていないか
- 開発の目的が、自己の居住用か、自己の業務用か、それ以外か
- 34条11号・12号の条例指定区域に入っているか。区域の範囲が見直されていないか
- どの号で説明するかを、設計に入る前に決めた
- 対象地が農地であれば、農地転用の許可が別に要る
- 売買契約の前に、窓口で事前相談を済ませた
本記事は都市計画法および国土交通省・自治体の公表資料をもとに構成しています。条例による指定区域、技術基準、ハザードエリアの範囲は自治体ごとに異なり、見直しによって変わります。実際の検討にあたっては、必ず許可権者の窓口と最新の資料でご確認ください。
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