調整区域に農業用施設を建てる ── 許可が要らないもの、要るもの
- 温室・畜舎・農機具の倉庫など生産のための建築物は、調整区域でも開発許可が要らない
- 農産物の加工場や貯蔵施設は許可が要らない側に入らない。34条4号で許可を受ける
- 直売所や農家レストランは、自治体の運用で扱いが分かれる
- 開発許可が要らなくても、農地転用、農振の用途変更、建築確認は別に問われる
農業のための建物なら、市街化調整区域でも自由に建てられると考えられがちです。
実際には、自由に近いのは生産に直接使う建物だけで、加工・販売・飲食の建物は開発許可の審査を受け、農地の上なら転用の手続きも重なります。
この記事では、調整区域で農業用施設を建てるとき、許可が要らないもの、許可を受けて建てるもの、扱いが分かれるものを分け、あわせて問われる手続きを整理します。
四つの法律が重なる
調整区域の農地や農地の近くに農業用施設を建てるとき、確かめる法律は一つではありません。
| 法律 | 問われること | 窓口 |
|---|---|---|
| 都市計画法 | その建築物を調整区域に建ててよいか(開発許可・43条の建築許可) | 開発許可の担当課 |
| 農地法 | 建てる場所が農地なら、転用してよいか | 農業委員会 |
| 農業振興地域の整備に関する法律 | 農用地区域の中なら、用途を変えてよいか | 市町村の農政担当課 |
| 建築基準法 | 建物として安全か(建築確認) | 建築主事・指定確認検査機関 |
一つの法律で「要らない」とされても、ほかの法律の手続きは残ります。以下、都市計画法から順に見ていきます。
許可が要らない建築物
都市計画法は、市街化調整区域などで農林漁業の用に供する建築物を建てるための開発行為を、許可の対象から外しています(29条1項2号)。どの建築物が当たるかは政令(施行令20条)が定めています。
| 号 | 建築物の例 |
|---|---|
| 1号 | 畜舎、蚕室、温室、育種苗施設、搾乳施設、集乳施設など、生産や集荷のための建築物 |
| 2号 | 堆肥舎、サイロ、種苗貯蔵施設、農機具等収納施設など、資材を置くための建築物 |
| 3号 | 家畜診療の用に供する建築物 |
| 4号 | 用排水機、取水施設など、農用地の保全や利用のための建築物 |
| 5号 | 上記のほか、農林漁業の用に供する建築面積90平方メートル以内の建築物 |
これらは、造成を伴わずに建てる場合の建築許可(43条)も要りません。判断は誰が建てるかではなく、建物を何に使うかでされるため、農業に参入した企業が建てる温室や農機具の倉庫も、この扱いに入ります。
同じ条文で許可が要らないとされている「農業を営む者の住宅」は、個人の農業者の住まいを想定したものです。
企業が従業員のために建てる寮や社宅は、農業の従事者が住むものであっても、この扱いには入りません。事務所や休憩所も、農業の用に直接供するものと言えるかが問われます。迷う建物は、設計に入る前に開発許可の担当課に確認します。
加工場と貯蔵施設
農産物を洗う、選別する、冷蔵する、加工する。こうした施設は、施行令20条の「生産」のための建築物には入りません。調整区域で建てるには開発許可(造成を伴わなければ43条の許可)が必要で、立地を認める根拠になるのが34条4号です。
34条4号は、調整区域で生産される農産物などの処理・貯蔵・加工に必要な建築物を、許可できるものとしています。具体的な運用は自治体が基準で定めており、次のような点が問われます。
- 業種:どの種類の処理・加工なら認めるか
- 原材料の産地:主として、その自治体の調整区域で生産されたものを扱うか
- 申請者:農業者、農業者の団体、農業協同組合などに限るか。建物の所有者と使う者が同じか
企業が参入して加工まで手がける場合、原材料をどこから仕入れるかが、許可の可否に直接かかわります。34条の号ごとの中身もあわせて確認してください。
直売所と農家レストラン
販売や飲食の施設は、生産の施設とも加工の施設とも性格が違います。
直売所や農家レストランを、どの号で説明するかは自治体の運用によって分かれます。
自分で生産した農産物の直売所を34条4号の範囲で扱う例、日常生活に必要な店舗として34条1号で扱う例、開発審査会に付して34条14号で扱う例があります。飲食を伴う施設は、審査会の基準に個別に当てはまるかを問われることが多くなります。建物の規模、扱う品目、客席の有無で結論が変わるため、土地を決める前に事前相談を受けておくのが確実です。
農地の上に建てるとき
建てる場所が農地なら、都市計画法とは別に農地法の手続きが要ります。
- 転用の許可:農業用施設であっても、農地に建物を建てるのは原則として転用にあたる。自分の農地なら4条、権利を取得して建てるなら5条の許可を受ける
- 2アール未満の特例:耕作をしている者が、自分の農地の2アール未満を自分の農業用施設に使う場合は、転用の許可が要らない。ただし市町村への届出を求める運用がある
- 農作物栽培高度化施設:底面をコンクリートで覆った栽培用のハウスなどは、農業委員会に届け出れば、農地のままとして扱われる
さらに、その農地が農業振興地域の農用地区域の中にある場合は、転用の前に、農用地区域の中で用途を「農業用施設用地」に変える手続きが要ります。区域から外す農振除外とは別の手続きです。転用の全体は農地転用の記事にまとめています。
建築確認と畜舎
開発許可が要らないことと、建築確認が要らないことは別です。都市計画区域の中で建物を建てるときは、規模にかかわらず原則として建築確認を受けます。温室や倉庫も、建築物にあたる限り例外ではありません。
畜舎については、令和4年(2022年)に施行された畜舎特例法があります。計画の認定を受けて建てる畜舎や堆肥舎などは、建築基準法に代わってこの法律の基準で建てられます。認定の対象や基準は、農林水産省と都道府県の資料で確認します。
計画の順序
手続きは、次の順で確かめると後戻りが少なくなります。
- 建物の用途を分ける。生産の施設か、加工・貯蔵か、販売・飲食か
- 都市計画法の扱いを確かめる。許可が要らないか、34条の何号で説明するか
- 土地の条件を確かめる。農地か、農用地区域の中か
- 建築の手続きを確かめる。建築確認か、畜舎特例法の認定か
- 建物ごとに、生産・加工・販売のどれにあたるかを分けた
- 生産の施設が、施行令20条の各号のどれにあたるかを確かめた
- 加工・貯蔵の施設について、34条4号の基準(業種・原材料の産地・申請者)を確かめた
- 直売所や飲食の施設について、どの号で扱うかを事前相談で確かめた
- 寮・社宅・事務所など、農業の用に直接供しない建物を計画から分けた
- 建てる場所が農地か、農用地区域の中かを確かめた
- 建築確認の要否と、畜舎特例法を使うかを決めた
まとめ
- 温室・畜舎・農機具の倉庫など生産のための建築物は、調整区域でも開発許可と43条の許可が要らない
- 判断は建物の用途でされる。企業が建てる生産施設も同じ扱いだが、寮や社宅は入らない
- 加工場や貯蔵施設は34条4号で許可を受ける。原材料の産地や申請者の要件が問われる
- 直売所や農家レストランは自治体の運用で扱いが分かれるため、土地を決める前に事前相談する
- 農地転用、農用地区域の用途変更、建築確認は、開発許可とは別に問われる
熊本県・熊本市の市街化調整区域での農業用施設に伴う開発許可、43条の建築許可、農地転用、農用地区域の用途変更。行政書士 村上事務所(熊本市東区)が承っています。
