標準地と基準地 ── 自分の土地との差をどう調整するか
- 標準地・基準地はその地域の典型として選ばれる。特殊な条件の土地は代表されない
- 公表されるのは価格だけではない。地積・形状・接道・法令上の制限まで載っている
- だから自分の土地との条件差を、項目ごとに突き合わせられる
- 近くの地点の価格を、そのまま自分の土地に当てはめない
公示地価や基準地価で発表されるのは、特定の地点についての価格です。
「近くの標準地が○円だった」からといって、自分の土地が同じ価格になるわけではありません。
ただ、公表資料にはその地点の条件が細かく載っています。これを読めば、自分の土地との差を項目ごとに確かめられます。この記事では、その使い方を扱います。
どう選ばれるか
| 呼び方 | 選定 | |
|---|---|---|
| 公示地価 | 標準地 | 国土交通省土地鑑定委員会 |
| 基準地価 | 基準地 | 都道府県 |
選定の考え方
- その地域の標準的な土地であること
- 利用の状況、環境、地積、形状などが、周辺の典型を代表していること
- 地域ごとにバランスよく配置されること
その地域でよく見られる、ありふれた条件の土地が選ばれます。
そのため、次のような土地は標準地として選ばれません。
- 極端に大きい、または小さい
- 著しく不整形
- 高低差が大きい
- 接道が特殊(路地状敷地、無道路地)
- 特殊な用途に使われている
裏を返せば、これらの条件に当てはまる土地は、公表価格が直接には当てはまりません。その分の調整が必要になります。
公表される情報
価格だけが発表されるわけではありません。地点ごとに、次の情報が公表されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在・地番 | どこの地点か |
| 価格 | 1平方メートルあたり |
| 交通施設との接近状況 | 駅名と距離 |
| 地積 | 面積 |
| 形状 | 間口と奥行の比で示される |
| 利用の現況 | 住宅、店舗、工場など |
| 周辺の土地の利用の現況 | どういう地域か |
| 前面道路の状況 | 方位、幅員、種類 |
| 供給処理施設 | 水道、ガス、下水 |
| 法令上の制限 | 区域区分、用途地域、建蔽率、容積率 |
価格だけを見て終わりにしないでください。
前面道路の幅員が6メートルの地点と、対象地が4メートルなら、条件が違います。用途地域が違えば、建てられる建物が違います。
項目ごとに突き合わせることで、どこが違うのかが分かります。
これらは不動産情報ライブラリで、地図から地点を選んで確認できます。無料です。
自分の土地との差を調整する
近隣の標準地・基準地を見つけたら、次の項目で条件を比べてください。
| 項目 | 差があると |
|---|---|
| 前面道路の幅員 | 容積率の制限が変わる。二項道路なら後退が必要 |
| 道路の方位 | 南側道路と北側道路で、日照と使い勝手が違う |
| 道路の種類 | 公道か私道か。私道なら承諾の問題 |
| 地積 | 広すぎると分割が必要。狭すぎると使いにくい |
| 形状 | 不整形なら、建てられる範囲が減る |
| 高低差 | 造成費、擁壁の維持 |
| 用途地域 | 建てられる建物の種類と規模 |
| 区域区分 | 市街化調整区域なら、価格水準がまったく違う |
| 供給処理施設 | 引込みがなければ、その費用が要る |
市街化区域の標準地と、市街化調整区域の土地を比べても意味がありません。
調整区域では建築に許可が必要で、買い手も限られます。同じ町内であっても、価格の水準は別のものです。
比べるなら、同じ区域区分、同じ用途地域の地点を探してください。
地点がない場合
標準地・基準地は、すべての土地の近くにあるわけではありません。
| 対応 | |
|---|---|
| 近くに地点がない | 条件の近い地点を、少し離れた場所で探す |
| 都市計画区域外 | 基準地価のほうが地点がある場合がある |
| どちらもない | 相続税路線価、成約事例、鑑定評価 |
相続税路線価は道路ごとに設定されているため、地点の密度が高くなります。
路線価がない地域では倍率方式が使われ、固定資産税評価額に倍率を掛けて評価します。
誤解しやすいこと
一 地点の価格は、実際の取引価格ではない
公表されるのは、特別の事情がない通常の市場で成立すると考えられる価格です。
実際の取引では、これより高いことも低いこともあります。急いで売る、隣地だから欲しい、といった事情が入るためです。
二 地点の変動率は、周辺すべてに当てはまらない
その地点が上昇していても、条件の違う土地が同じだけ上がるとは限りません。
とくに、再建築できない土地、調整区域の土地は、周辺の上昇の影響を受けにくくなります。
三 地点は入れ替わることがある
毎年同じ地点が続くとは限りません。選定替えがあると、前年との単純な比較ができなくなります。
公表資料には、継続地点かどうかが分かる形で記載されています。
四 林地は別に集計される
基準地価では、林地が別枠で調査されています。「全用途」の集計には林地が含まれない場合があるため、地点数が資料によって違って見えることがあります。
総地点数と、集計対象の地点数を確認してください。
使い方の手順
| すること | |
|---|---|
| 一 | 不動産情報ライブラリで、対象地の近くの地点を探す |
| 二 | 区域区分と用途地域が同じ地点を選ぶ |
| 三 | その地点の詳細情報を読む道路・地積・形状・制限 |
| 四 | 対象地との条件差を書き出す |
| 五 | 数年分の推移を確認する |
| 六 | 成約事例と照らし合わせる |
頭の中で調整すると、都合の良い方向に寄ります。
項目を並べて、対象地が有利な点と不利な点を両方書き出してください。
- 標準地は前面道路6メートル、対象地は4メートル 不利
- 標準地は駅から800メートル、対象地は500メートル 有利
- 標準地は整形、対象地は不整形 不利
この形で残しておくと、後から説明できます。顧客に示す資料にもなります。
鑑定評価が必要な場面
目安ではなく、根拠を示した価格が必要な場面があります。
| 場面 | 備考 |
|---|---|
| 遺産分割 | 相続人の間で争いがある場合 |
| 裁判 | 証拠として提出する |
| 税務 | 路線価と実勢が乖離している場合など |
| 同族間の取引 | 価格の妥当性を示す必要がある |
| 担保評価 | 金融機関が求める場合 |
不動産鑑定士による鑑定評価は費用がかかりますが、根拠を示した書面が得られます。
争いが想定される場面では、その価値があります。
説明するとき
| 避けるべき言い方 | 適切な言い方 |
|---|---|
| 「近くの公示地価が○円なので、この価格です」 | 「近隣の標準地は○円です。ただし条件が違うので、この点を調整します」 |
| 「公示地価が上がっているので値上がりします」 | 「その地点の推移はこうです。この土地の条件は別に見る必要があります」 |
| 「公示地価が根拠です」 | 「公示地価と成約事例の両方を見て判断しています」 |
標準地と対象地の条件が近ければ、参考になります。離れるほど、調整の幅が大きくなり、目安としての意味は薄れます。
とくに次の場合、公表価格をそのまま使うことはできません。
- 再建築できない土地 接道を満たしていない
- 市街化調整区域の土地
- 境界が未確定、越境がある
- 擁壁に問題がある
- 災害の警戒区域内にある
これらは、地域の価格水準とは別に評価されます。成約事例を探すか、鑑定評価を検討してください。
- 対象地の近くの標準地・基準地を探した
- 区域区分と用途地域が同じ地点を選んだ
- 価格だけでなく、地点の詳細情報を読んだ
- 前面道路の幅員・方位・種類を比べた
- 地積と形状を比べた
- 建蔽率・容積率を比べた
- 供給処理施設の状況を比べた
- 条件差を書き出した有利な点と不利な点の両方
- 数年分の推移を確認した
- 継続地点かどうか確認した
- 成約事例と照らし合わせた
- 対象地が特殊な条件でないか確認した再建築不可・調整区域・境界未確定
- (争いが想定される)鑑定評価を検討した
- 公表価格を、そのまま対象地の価格として説明していない
まとめ
- 標準地・基準地は、その地域の典型として選ばれる。特殊な条件の土地は代表されない。
- 公表されるのは価格だけではない。道路、地積、形状、法令上の制限まで載っている。
- 項目ごとに突き合わせると、自分の土地との差が分かる。
- 区域区分が違えば、比較にならない。同じ区分の地点を探す。
- 条件差が大きい土地では、公表価格をそのまま使えない。成約事例か鑑定評価へ。
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