プロパンガスと設備の無償貸与 ── 令和6年に何が変わったか
- 設備費用を入居者のガス料金に転嫁する仕組みだった
- 令和6年の省令改正で、賃貸集合住宅への無償貸与等が制限された
- 料金の内訳を示す三部料金制も義務づけられた
- 入居者はガス会社を選べない。だから規制の対象になった
築年数の経ったアパートなのに、給湯器やコンロが新しい。「どうやって費用を出したのか」と思ったことがあるかもしれません。
多くの場合、大家が払っていません。ガス会社が負担しています。
ではその費用は誰が払ったのか。この記事では、仕組みと、令和6年に変わった規制を整理します。
仕組み
| 登場する人 | していたこと |
|---|---|
| 所有者 | 初期費用なしで設備を更新できる |
| ガス会社 | 設備費用を負担し、独占供給の契約を結ぶ |
| 入居者 | 上乗せされたガス料金を払う |
費用は、最終的に入居者が負担します。
エアコン、給湯器、インターホン、宅配ボックス。ガスと直接関係のない設備まで対象になっていました。
ガス会社は設備費用を回収するため、ガス料金に上乗せします。
なぜ問題とされたか
電気であれば、契約先を変えられます。プロパンガスは、その建物に供給しているガス会社としか契約できません。
そのため、次の状態が生じます。
- 料金が高くても、他社に乗り換えられない
- 自分が使わない設備の費用まで負担している
- 入居時に、上乗せの有無も額も知らされていない
- 退去しても、次の入居者が引き継ぐ
負担する人と、決める人が別なのです。
所有者は費用を負担せず、ガス会社は回収できる。両者にとって都合がよく、入居者だけが知らないまま払い続ける。
この構造が、規制の対象となりました。
令和6年の改正
液化石油ガスに関する法律の省令が改正され、二つの時期に分けて施行されました。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 令和6年(2024年)7月 | 過大な営業行為の制限 |
| 令和7年(2025年)4月 | 料金の透明化 |
前者が、この仕組みそのものに関わります。
過大な営業行為の制限
賃貸集合住宅について、ガスの供給と直接関係のない設備を無償で貸与し、その費用をガス料金に転嫁することが制限されました。
| 対象となる例 | |
|---|---|
| エアコン | ガスと関係がない |
| インターホン | 同上 |
| 宅配ボックス | 同上 |
| Wi-Fi設備 | 同上 |
ガス配管など、供給に必要な設備は別の扱いです。
詳しい範囲と例外は、資源エネルギー庁が公表する資料で確認してください。
料金の透明化
料金の内訳を、三つに分けて示すことが求められます。
| 内容 | |
|---|---|
| 基本料金 | 使用量にかかわらずかかる分 |
| 従量料金 | 使った量に応じた分 |
| 設備料金 | 設備の費用に相当する分 |
三つ目を独立させることで、何にいくら払っているかが見えるようになります。
あわせて、料金の情報を公表することや、契約前の書面による説明も求められています。
実務でどうするか
所有者の立場
設備をガス会社の負担で更新する、という方法は従来のようには使えません。
検討することです。
- 既存の契約がどうなっているか、ガス会社に確認する
- 無償貸与を受けている設備を洗い出す
- 今後の更新は、自己負担または他の資金手当てを前提に考える
- 入居者の料金がどうなるか確認する
- 契約の見直しや解約の条件を確認する
既存の契約には経過的な扱いが設けられています。
いつまでに何をすべきかは、契約内容と改正の運用によります。ガス会社と、必要なら所管の窓口に確認してください。
仲介する立場
| 確認すること | なぜ |
|---|---|
| ガスの種類 | 都市ガスかプロパンガスか |
| 供給するガス会社 | 選べないことを伝える |
| 料金の水準 | 目安を示せるか |
| 設備の貸与 | 無償貸与を受けている設備があるか |
| 料金の内訳 | 設備料金が含まれているか |
| 退去時の扱い | 設備の撤去や精算の定めがあるか |
入居後に「ガス代が高い」という苦情になることがあります。
プロパンガスは都市ガスに比べて料金が高くなる傾向があります。これは仕組み上のもので、その物件の問題ではありません。
案内の段階で伝えておくべきことです。
- プロパンガスであること
- ガス会社は選べないこと
- 料金の目安
- 設備料金が含まれる場合、その旨
後から知らされるほど、不信につながります。
賃料が安く見えても、ガス代を含めた月々の負担で比べてもらってください。
入居者の立場
- 契約前に、料金の内訳の説明を求める
- 設備料金が含まれるか確認する
- 公表されている料金情報を確認する
- 請求書の内訳を見る習慣をつける
- 疑問があれば、ガス会社に照会する
売買のときにも影響する
収益物件を売買する際、建物に付いている設備が誰のものかが問題になります。
| 確認すること | 影響 |
|---|---|
| 無償貸与の契約があるか | 設備はガス会社の所有かもしれない |
| 契約の残存期間 | 解約すると違約金が生じることがある |
| 買主への承継 | 契約上の地位を引き継ぐか |
| 解約の条件 | 設備の買取りを求められる場合がある |
「建物に付いているから自分のもの」とは限りません。
売買の際、この契約の存在を知らずに引き継ぎ、後で負担が判明することがあります。
重要事項説明の準備として、ガスの供給契約と設備の所有関係を必ず確認してください。
都市ガスとの違い
| 都市ガス | プロパンガス | |
|---|---|---|
| 供給 | 導管による | ボンベの配送 |
| 供給区域 | 導管が敷設された区域 | 区域を問わない |
| 料金 | 比較的低い傾向 | 高くなる傾向 |
| 会社の選択 | 小売の自由化がある | 建物ごとに決まっている |
| 災害時 | 復旧に時間がかかることがある | 個別供給のため復旧が早い場合がある |
プロパンガスが劣るということではありません。
導管のない地域では、これしか選択肢がありません。問題は、費用の負担が見えないことでした。
- ガスの種類を確認した都市ガスかプロパンガスか
- 供給するガス会社を確認した
- 無償貸与を受けている設備があるか確認した
- 料金に設備料金が含まれるか確認した
- 三部料金制による内訳の提示を求めた
- (案内)ガス会社を選べないことを伝えた
- (案内)料金の目安を伝えた
- (案内)ガス代を含めた月々の負担で比較してもらった
- (売買)設備の所有者を確認した
- (売買)契約の残存期間と解約条件を確認した
- (売買)買主への承継の扱いを確認した
- (所有者)既存契約の扱いをガス会社に確認した
- 改正の内容を、所管省庁の資料で確認した
まとめ
- 設備費用をガス料金に上乗せし、入居者が負担する仕組みだった。
- 入居者はガス会社を選べない。負担する人と決める人が別だった。
- 令和6年7月から、賃貸集合住宅への無償貸与等が制限された。
- 令和7年4月から、三部料金制により設備料金の内訳が示される。
- 売買では、設備の所有者と契約の承継を必ず確認する。
不動産事業者、専門職団体の皆様向けにお引き受けしています。改正の内容と、説明すべき範囲をお話しします。
構成のご提案とお見積りまで、費用はかかりません。
