土地区画整理 ── 減歩と換地の考え方
- 仮換地は、原則としてそのまま換地になる。元の土地に戻るのではない
- 減歩は二種類。公共減歩と保留地減歩。合わせた率が地権者の負担になる
- 金銭負担が生じることがある。清算金、組合施行なら賦課金
- 施行地区内の建築等には76条の許可が必要。知らずに着工すると是正の対象になる
「仮換地の指定を受けています」と言われた土地を扱うとき、登記簿上の土地と、実際に使える土地の位置が違います。
しかも、この「仮」という字が誤解を生みます。工事が終われば元の土地に戻る、と受け取られがちですが、そうではありません。仮換地は、原則としてそのまま換地になります。
この記事では、区画整理の仕組みと、実務で関わる場面での確認事項を扱います。
仕組み
土地区画整理法に基づく事業です。地権者から土地を少しずつ出し合ってもらい、道路や公園を整備し、残った土地を整形して配り直す。この「配り直し」を換地といいます。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 従前地 | 事業前の土地 |
| 換地 | 事業後に割り当てられる土地 |
| 仮換地 | 工事期間中に使用収益できる土地として指定されるもの |
| 減歩 | 従前地より換地が小さくなること、またはその割合 |
| 保留地 | 事業費を捻出するため、換地として定めず売却する土地 |
減歩は二種類
| 内容 | 行き先 | |
|---|---|---|
| 公共減歩 | 道路、公園、水路などの公共施設用地に充てる分 | 公共施設 |
| 保留地減歩 | 事業費を賄うため売却する土地に充てる分 | 売却して事業費に |
この二つを合わせたものが合算減歩率です。地区によりますが、二割から四割程度になることがあります。
減歩は土地の提供であって、現金の支出ではありません。しかし金銭的な負担がまったくないわけではありません。
清算金 換地と従前地の価値に差がある場合、その差額を金銭で調整します。もらう場合(交付)と、払う場合(徴収)があります。
賦課金 組合施行では、事業に要する経費に充てるため、組合が組合員から賦課金を徴収することができます(土地区画整理法40条)。保留地が計画どおり売れなかった場合などに、実際に徴収される例があります。
相談を受けたときに「負担はありません」と断定しないでください。
仮換地の指定
指定されると何が変わるか
仮換地の指定を受けると、従前地は使用収益できなくなり、仮換地を使用収益できるようになります。
| 従前地 | 仮換地 | |
|---|---|---|
| 所有権 | 従前地に残る | ― |
| 登記 | 従前地のまま | ― |
| 使用収益 | できない | できる |
| 建物を建てる | ― | 仮換地上に建てる |
所有権は従前地に残り、使用収益権だけが仮換地に移る。この「ねじれ」が実務で混乱を招きます。
仮換地は、換地処分によってそのまま換地になるのが原則です。工事が完了しても元の土地には戻りません。
「仮」という字は、「換地処分の前だから法的には確定していない」という意味であって、「一時的に借りている」という意味ではありません。
仮換地の位置と形状は、事実上その土地の将来の姿です。相談者にはここを明確に伝えてください。
換地照応の原則
換地は、従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境などが照応するように定めなければなりません(89条)。
これがあるため、まったく違う場所に飛ばされることは原則としてありません。ただし「照応」の判断には幅があり、位置や形状に不満が生じることはあります。
事業の流れ
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 都市計画決定 | 市街地開発事業として決定される場合 |
| 事業計画の決定・認可 | 施行地区、設計の概要、事業施行期間、資金計画 |
| (組合施行)組合設立認可 | 宅地所有者・借地権者の3分の2以上の同意 |
| 換地設計 | 誰にどの位置の換地を割り当てるか |
| 仮換地の指定 | ここから使用収益が移る |
| 工事 | 移転補償、建物移転、道路・公園等の整備 |
| 換地処分 | 公告により権利が確定する |
| 登記 | 施行者が一括して申請 |
| 清算金 | 徴収・交付 |
換地処分の効果
換地処分の公告があった日の翌日から、換地は従前の宅地とみなされます。従前地に存した権利は、換地の上に移ります。
保留地は、この日に施行者が取得します。清算金の額も確定します。
建築等の制限(76条)
事業計画の決定の公告等があった後は、施行地区内において、事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更、建築物その他の工作物の新築・改築・増築、重量が5トンを超える物件の設置・堆積を行おうとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければなりません(土地区画整理法76条)。
知らずに着工すると、是正の対象になります。施行地区内の物件を扱う際は、必ず確認してください。
施行者
| 施行者 | 特徴 |
|---|---|
| 個人施行者 | 宅地の所有者・借地権者が1人または数人共同で |
| 土地区画整理組合 | 7人以上共同して設立。3分の2以上の同意で設立認可を申請 |
| 区画整理会社 | 一定割合以上の地権者が議決権を持つ株式会社 |
| 地方公共団体 | 都道府県、市町村 |
| 国土交通大臣 | 国の利害に重大な関係がある場合 |
| UR都市機構・地方住宅供給公社 | 大規模事業 |
実務で関わる場面
施行地区内の物件を扱うとき
確認すべきことが、通常の取引より多くなります。
- 事業の段階 事業計画決定前/決定後/仮換地指定後/換地処分後
- 仮換地の位置と地積 従前地とは別。仮換地図で確認する
- 使用収益開始の時期 指定されても、工事の関係で開始が後になることがある
- 減歩率 従前地に対してどれだけ減るか
- 清算金の見込み 徴収か交付か、概算額
- 賦課金 組合施行の場合、徴収の見込みがあるか
- 76条の許可 建築等を予定しているなら、許可が要る
換地処分は事業の最後に行われます。売買の後に清算金が確定し、買主に請求が来ることがあります。
徴収清算金を誰が負担するのか、交付清算金を誰が受け取るのか。契約で明確にしてください。決めていないと、後から必ず揉めます。
組合施行の賦課金についても同様です。事業の進捗と保留地の処分状況を、施行者に確認しておいてください。
登記の扱い
仮換地指定中の土地の売買では、登記の対象は従前地です。登記簿には従前地の地番・地積が記載されており、仮換地の情報は登記簿に現れません。
物件の表示をどう書くかは、実務上の工夫が要ります。従前地の表示に加えて、仮換地の街区・画地番号と地積を併記するのが一般的です。
換地処分後は、施行者が一括して登記を申請します。この間、個別の登記が制限される期間があります。決済の時期を計画する際は、施行者に確認してください。
建物の移転
従前地に建物がある場合、仮換地への移転が必要になります。移転の方法(曳家、再築)と補償の内容は、施行者との協議によります。
移転時期は事業の工程に従うため、所有者の都合で自由に決められません。売買のスケジュールに影響します。
再開発事業との違い
| 土地区画整理事業 | 市街地再開発事業 | |
|---|---|---|
| 対象 | 土地を整形して配り直す | 土地と建物を、ビルの床の権利に変換する |
| 結果 | 整形された土地を取得 | ビルの床(区分所有)を取得 |
| 負担の形 | 減歩 | 権利床の縮小 |
| 事業費の財源 | 保留地処分金 | 保留床処分金 |
| 向く場面 | 面的な基盤整備、郊外の宅地開発 | 高度利用、駅前の建替え |
どちらも余剰を生んで売り、その代金で事業費を賄うという構造は共通です。土地で余剰を作るのが区画整理、床で作るのが再開発、と捉えると理解しやすくなります。
- 施行地区内かどうか確認した
- 事業の段階を確認した計画決定前/後/仮換地指定後/換地処分後
- 施行者を確認した個人・組合・会社・地方公共団体・UR等
- 仮換地図で仮換地の位置・街区・画地番号・地積を確認した
- 使用収益開始日を確認した指定と開始がずれることがある
- 減歩率を確認した公共減歩+保留地減歩
- 清算金の見込みを確認した徴収か交付か
- 清算金の負担者を契約で明確にした
- (組合施行)賦課金の徴収見込みを確認した
- 保留地の処分状況を確認した売れ残ると賦課金の可能性
- 建築等を予定する場合、76条の許可の要否を確認した
- 建物がある場合、移転の時期と補償の内容を確認した
- 物件の表示に従前地と仮換地の両方を記載した
- 換地処分前後の登記制限の期間を確認した
- 「仮換地は元の土地に戻る」と誤って説明していない
まとめ
- 仮換地は原則としてそのまま換地になる。元の土地には戻らない。
- 所有権は従前地に残り、使用収益権が仮換地に移る。登記簿には仮換地の情報が現れない。
- 減歩は公共減歩と保留地減歩の二種類。合わせた率が地権者の負担になる。
- 清算金と賦課金という金銭負担が生じうる。誰が負担するかを契約で決めておく。
- 施行地区内の建築等には76条の許可が要る。知らずに着工すると是正の対象になる。
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