土地区画整理 ── 減歩と換地の考え方

この記事の要点
  • 仮換地は、原則としてそのまま換地になる。元の土地に戻るのではない
  • 減歩は二種類。公共減歩と保留地減歩。合わせた率が地権者の負担になる
  • 金銭負担が生じることがある。清算金、組合施行なら賦課金
  • 施行地区内の建築等には76条の許可が必要。知らずに着工すると是正の対象になる

「仮換地の指定を受けています」と言われた土地を扱うとき、登記簿上の土地と、実際に使える土地の位置が違います。

しかも、この「仮」という字が誤解を生みます。工事が終われば元の土地に戻る、と受け取られがちですが、そうではありません。仮換地は、原則としてそのまま換地になります。

この記事では、区画整理の仕組みと、実務で関わる場面での確認事項を扱います。

土地は減る。位置も変わる。それでも成り立つ理由
区画整理は、区域全体の土地を出し合って道路と公園をつくり、残りを配り直す仕組みである
従前地いま登記されている土地。道が狭い、形が悪い、
接道していないこともある
▸
減歩面積の一部を出す。道路・公園の用地と、
保留地の分
▸
換地配り直された土地。面積は減るが、
道が付き、形が整う
面積が減った分を、利用しやすさで埋め合わせるという考え方接道し、形が整い、上下水道が入る。ただし、これは制度の建前であって、個々の土地で必ず釣り合うとは限らない
釣り合いのずれは、最後に清算金という金銭で調整される
図1 従前地から換地へ ── 何が減り、何が変わるか

仕組み

土地区画整理法に基づく事業です。地権者から土地を少しずつ出し合ってもらい、道路や公園を整備し、残った土地を整形して配り直す。この「配り直し」を換地といいます。

用語 意味
従前地 事業前の土地
換地 事業後に割り当てられる土地
仮換地 工事期間中に使用収益できる土地として指定されるもの
減歩 従前地より換地が小さくなること、またはその割合
保留地 事業費を捻出するため、換地として定めず売却する土地
出した土地が、そのまま事業費になる
地権者が出す減歩は二種類。使われ方が違う
公共減歩道路・公園などの
公共用地にあてる分。
土地そのものが公共施設になる
保留地減歩売却して事業費にあてる分。
売れた代金が
工事費の原資になる
事業費はどこから出てくるか
保留地処分金保留地を売った代金
+
公的資金国・自治体の補助金
公共施設管理者負担金
=
事業費道路・上下水道の整備
建物の移転補償
保留地が予定どおり売れないと、事業費が足りなくなる。組合施行では賦課金の議論になりうる
図2 二つの減歩と、事業費の出どころ

減歩は二種類

内容 行き先
公共減歩 道路、公園、水路などの公共施設用地に充てる分 公共施設
保留地減歩 事業費を賄うため売却する土地に充てる分 売却して事業費に

この二つを合わせたものが合算減歩率です。地区によりますが、二割から四割程度になることがあります。

「地権者に金銭的負担はない」とは言えない

減歩は土地の提供であって、現金の支出ではありません。しかし金銭的な負担がまったくないわけではありません。

清算金 換地と従前地の価値に差がある場合、その差額を金銭で調整します。もらう場合(交付)と、払う場合(徴収)があります。

賦課金 組合施行では、事業に要する経費に充てるため、組合が組合員から賦課金を徴収することができます(土地区画整理法40条)。保留地が計画どおり売れなかった場合などに、実際に徴収される例があります。

相談を受けたときに「負担はありません」と断定しないでください。

仮換地の指定

指定されると何が変わるか

仮換地の指定を受けると、従前地は使用収益できなくなり、仮換地を使用収益できるようになります。

従前地 仮換地
所有権 従前地に残る ―
登記 従前地のまま ―
使用収益 できない できる
建物を建てる ― 仮換地上に建てる

所有権は従前地に残り、使用収益権だけが仮換地に移る。この「ねじれ」が実務で混乱を招きます。

「仮」だが、戻らない

仮換地は、換地処分によってそのまま換地になるのが原則です。工事が完了しても元の土地には戻りません。

「仮」という字は、「換地処分の前だから法的には確定していない」という意味であって、「一時的に借りている」という意味ではありません。

仮換地の位置と形状は、事実上その土地の将来の姿です。相談者にはここを明確に伝えてください。

換地照応の原則

換地は、従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境などが照応するように定めなければなりません(89条)。

これがあるため、まったく違う場所に飛ばされることは原則としてありません。ただし「照応」の判断には幅があり、位置や形状に不満が生じることはあります。

段階ごとに、効いてくる条文が変わる
いまどの段階にあるかで、その土地にできることが決まる
事業計画の決定・公告
法76条
この時点から、施行地区内での建築・工作物の新築や増改築、
土地の形質変更に許可が要るようになる
仮換地の指定
法99条
従前地は原則として使えなくなり、使用・収益する権利が仮換地に移る。
ここから仮換地の上で建物を建てられる
移転・工事
—
建物を移転し、道路や上下水道を整備する。
補償金の受け取りと移転が並行する
換地処分の公告
法104条
公告の翌日から、仮換地が正式に「従前の宅地」とみなされる。
所有権が確定し、公共施設は市町村の管理に移る
清算・登記
—
過不足を清算金で調整し、施行者が一括して登記を変更する
「仮」という字に反して、仮換地は原則としてそのまま換地になる
図3 事業のプロセスと、各段階の法的効力

事業の流れ

段階 内容
都市計画決定 市街地開発事業として決定される場合
事業計画の決定・認可 施行地区、設計の概要、事業施行期間、資金計画
(組合施行)組合設立認可 宅地所有者・借地権者の3分の2以上の同意
換地設計 誰にどの位置の換地を割り当てるか
仮換地の指定 ここから使用収益が移る
工事 移転補償、建物移転、道路・公園等の整備
換地処分 公告により権利が確定する
登記 施行者が一括して申請
清算金 徴収・交付

換地処分の効果

換地処分の公告があった日の翌日から、換地は従前の宅地とみなされます。従前地に存した権利は、換地の上に移ります。

保留地は、この日に施行者が取得します。清算金の額も確定します。

建築等の制限(76条)

施行地区内では、建築に許可が要る

事業計画の決定の公告等があった後は、施行地区内において、事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更、建築物その他の工作物の新築・改築・増築、重量が5トンを超える物件の設置・堆積を行おうとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければなりません(土地区画整理法76条)。

知らずに着工すると、是正の対象になります。施行地区内の物件を扱う際は、必ず確認してください。

誰が施行するかで、性格が変わる
組合施行
行政施行
施行者
土地所有者・借地権者が設立する組合
都道府県、市町村、国土交通大臣など
主な目的
新市街地の開発、
一般的な住環境の改善
大規模な都市改造、防災拠点の整備、
震災復興事業など
要件
権利者の一定割合以上の同意が要る
都市計画事業として行われる
資金の性格
保留地の売却代金に大きく依存する
公的資金の割合が高くなりやすい
組合施行では、保留地が売れるかどうかが事業の成否を左右する同意の要件や手続の細目は法令による。具体の要件は施行者に確認する
図4 組合施行と行政施行

施行者

施行者 特徴
個人施行者 宅地の所有者・借地権者が1人または数人共同で
土地区画整理組合 7人以上共同して設立。3分の2以上の同意で設立認可を申請
区画整理会社 一定割合以上の地権者が議決権を持つ株式会社
地方公共団体 都道府県、市町村
国土交通大臣 国の利害に重大な関係がある場合
UR都市機構・地方住宅供給公社 大規模事業
熊本県益城町 ── 復旧ではなく、復興として
平成28年熊本地震のあと、被災した市街地を区画整理で作り直している事例
事業名
益城中央被災市街地
復興土地区画整理事業
施行者
熊本県(行政施行)
施行面積
約28.3ヘクタール
都市計画決定
平成30年3月
置かれた目標被災前の状態に戻す「復旧」ではなく、災害に強いまちをつくる「復興」として行う。
幹線道路の沿道に生活サービスと公益施設の用地を配置する
区画整理が復興の手法として選ばれる理由
避難路を確保できる狭い道と行き止まりを、
面としてまとめて直せる
境界のずれを整理できる地震で不明確になった
土地境界を、換地で確定する
拠点を配置し直せる公園・広場と生活サービスを
計画的に置ける
出典:内閣府「復興事例集」、益城町・熊本県の公表資料
図5 熊本県益城町 ── 震災復興の区画整理

実務で関わる場面

施行地区内の物件を扱うとき

確認すべきことが、通常の取引より多くなります。

  • 事業の段階 事業計画決定前/決定後/仮換地指定後/換地処分後
  • 仮換地の位置と地積 従前地とは別。仮換地図で確認する
  • 使用収益開始の時期 指定されても、工事の関係で開始が後になることがある
  • 減歩率 従前地に対してどれだけ減るか
  • 清算金の見込み 徴収か交付か、概算額
  • 賦課金 組合施行の場合、徴収の見込みがあるか
  • 76条の許可 建築等を予定しているなら、許可が要る
清算金と賦課金は、誰の負担か決めておく

換地処分は事業の最後に行われます。売買の後に清算金が確定し、買主に請求が来ることがあります。

徴収清算金を誰が負担するのか、交付清算金を誰が受け取るのか。契約で明確にしてください。決めていないと、後から必ず揉めます。

組合施行の賦課金についても同様です。事業の進捗と保留地の処分状況を、施行者に確認しておいてください。

登記の扱い

仮換地指定中の土地の売買では、登記の対象は従前地です。登記簿には従前地の地番・地積が記載されており、仮換地の情報は登記簿に現れません。

物件の表示をどう書くかは、実務上の工夫が要ります。従前地の表示に加えて、仮換地の街区・画地番号と地積を併記するのが一般的です。

換地処分後は、施行者が一括して登記を申請します。この間、個別の登記が制限される期間があります。決済の時期を計画する際は、施行者に確認してください。

建物の移転

従前地に建物がある場合、仮換地への移転が必要になります。移転の方法(曳家、再築)と補償の内容は、施行者との協議によります。

移転時期は事業の工程に従うため、所有者の都合で自由に決められません。売買のスケジュールに影響します。

再開発事業との違い

土地区画整理事業 市街地再開発事業
対象 土地を整形して配り直す 土地と建物を、ビルの床の権利に変換する
結果 整形された土地を取得 ビルの床(区分所有)を取得
負担の形 減歩 権利床の縮小
事業費の財源 保留地処分金 保留床処分金
向く場面 面的な基盤整備、郊外の宅地開発 高度利用、駅前の建替え

どちらも余剰を生んで売り、その代金で事業費を賄うという構造は共通です。土地で余剰を作るのが区画整理、床で作るのが再開発、と捉えると理解しやすくなります。

実務チェックリスト
  • 施行地区内かどうか確認した
  • 事業の段階を確認した計画決定前/後/仮換地指定後/換地処分後
  • 施行者を確認した個人・組合・会社・地方公共団体・UR等
  • 仮換地図で仮換地の位置・街区・画地番号・地積を確認した
  • 使用収益開始日を確認した指定と開始がずれることがある
  • 減歩率を確認した公共減歩+保留地減歩
  • 清算金の見込みを確認した徴収か交付か
  • 清算金の負担者を契約で明確にした
  • (組合施行)賦課金の徴収見込みを確認した
  • 保留地の処分状況を確認した売れ残ると賦課金の可能性
  • 建築等を予定する場合、76条の許可の要否を確認した
  • 建物がある場合、移転の時期と補償の内容を確認した
  • 物件の表示に従前地と仮換地の両方を記載した
  • 換地処分前後の登記制限の期間を確認した
  • 「仮換地は元の土地に戻る」と誤って説明していない

まとめ

  • 仮換地は原則としてそのまま換地になる。元の土地には戻らない。
  • 所有権は従前地に残り、使用収益権が仮換地に移る。登記簿には仮換地の情報が現れない。
  • 減歩は公共減歩と保留地減歩の二種類。合わせた率が地権者の負担になる。
  • 清算金と賦課金という金銭負担が生じうる。誰が負担するかを契約で決めておく。
  • 施行地区内の建築等には76条の許可が要る。知らずに着工すると是正の対象になる。
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