開発許可の許可権者 ── 熊本では、どこに出すか
- 許可を出すのは都道府県知事。ただし指定都市・中核市などは市が自ら出す
- それ以外の市町村でも、事務処理市町村として権限を持つことがある
- 熊本市は指定都市なので市が許可権者。県内のその他は県、または事務処理市町村
- 権限の配分は見直される。案件ごとに、市町村名で確かめる
「開発許可はどこに出すのですか」
これは、思っているより間違えやすい質問です。同じ県の中でも、市町村によって出す先が違います。そして、その配分は変わります。
原則と、例外
都市計画法29条は、開発許可を都道府県知事の権限としています。これが原則です。
その上で、次の場合には市が自ら許可を出します。
- 指定都市(政令指定都市)
- 中核市
- 事務処理市町村 ── 都道府県の条例により、開発許可の事務を処理することとされた市町村
三つ目が分かりにくいところです。指定都市でも中核市でもない市町村が、条例によって権限を持っていることがあります。
熊本ではどうなっているか
| 区域 | 許可権者 |
|---|---|
| 熊本市内 | 熊本市(指定都市) |
| 県内のその他の市町村 | 熊本県、または事務処理市町村 |
どの市町村が事務処理市町村になっているかは、県の条例で定められ、見直されます。
また、県が許可権者の区域でも、窓口となる出先機関(土木事務所など)は地域ごとに分かれています。県庁に行けばよい、というものではありません。
案件を受けたら、まず対象地の市町村名で、県または市の公表資料を確かめる。これを毎回やります。「あの町は確か県だったはず」という記憶で動かないことです。
許可権者が違うと、何が変わるか
根拠となる法律は同じですが、実際の運用にはかなりの幅があります。
- 条例による区域指定(34条11号・12号)── 市町村ごとに違う
- 提案基準(34条14号)── 許可権者ごとに違い、改定される
- 技術基準の細目 ── 道路の幅員、調整池の考え方、擁壁の扱い
- 様式と添付書類 ── 同じ内容でも書式が違う
- 標準処理期間
- 近隣説明の要綱 ── 範囲も時期も違う
- 開発審査会の開催日程
つまり、隣の市で通った書類が、そのままでは使えないということです。手引きと様式は、案件ごとに取り直します。
開発登録簿も、許可権者が持つ
過去の許可を調べるとき、開発登録簿を閲覧します。この帳簿を保管しているのも許可権者です。
ここで注意が要るのは、合併を経た地域です。市町村合併の前後で許可権者が変わっていることがあり、古い許可の記録が、いまの窓口とは違うところに残っている場合があります。
「見つからない」と言われたときは、当時の市町村名で探し直すと出てくることがあります。
県と市で、担当課の名前も違う
担当課の名称は自治体ごとに違います。都市計画課、開発指導課、建築住宅課、都市政策課——名前から中身を推測しないほうが確実です。
最初に電話するとき、確かめるのは次の三点です。
- この土地の開発許可は、そちらが窓口でよいか
- 事前相談は予約制か、随時か
- 手引きと様式はどこで入手できるか
これだけで、最初の一往復が省けます。
複数の市町村にまたがる場合
開発区域が市町村の境をまたぐことがあります。この場合、どちらが許可権者になるかを、あらかじめ整理しておく必要があります。
県が許可権者の区域と、市が許可権者の区域にまたがるときは、なお複雑です。早い段階で、両方の窓口に相談する。後から調整するより、はるかに短く済みます。
農地・森林は、また別の窓口
開発許可の権限がどこにあるかと、農地転用や林地開発の権限がどこにあるかは、別々に決まっています。
- 農地転用 ── 農業委員会(市町村)と都道府県知事等
- 農振除外 ── 市町村
- 林地開発許可 ── 都道府県知事
- 盛土規制法 ── 都道府県知事等(市が権限を持つ場合もある)
一つの案件で、市と県の両方に通うことになるのは珍しくありません。協議先の一覧を最初に作る理由が、ここにもあります。
- 対象地の市町村名を特定した
- その市町村が、指定都市・中核市・事務処理市町村のいずれかか確かめた
- 県が許可権者なら、担当の出先機関を確かめた
- 担当課の名称と電話番号を控えた
- 事前相談が予約制かどうか確かめた
- 手引きと様式を、その許可権者のものとして入手した
- 条例による区域指定(34条11号・12号)を確かめた
- 提案基準(34条14号)の最新版を確かめた
- 近隣説明の要綱を確かめた
- 区域が市町村の境をまたがないか確かめた
- 農地・森林・盛土の窓口も、別に確かめた
なぜ権限が下りているのか
開発許可の権限が市町村へ下りてきた背景には、地域のことは地域で決めるという流れがあります。
条例で区域を指定できる34条11号・12号も、同じ流れの中にあります。市町村が、自分のまちのどこまでを市街地として認めるかを決められる。その代わり、判断の責任も市町村が負います。
ですから、隣り合う市町村で扱いが違うのは、制度が不揃いだからではありません。それぞれが自分のまちの姿を決めた結果です。
「前はこうだった」が通じない理由
実務で危ないのは、経験が積み上がるほど、確かめなくなることです。
- 条例が改正され、区域が変わっている
- 提案基準が改定され、要件が増えている
- 災害の区域が指定され、対象から外れている
- 事務処理市町村が増え、窓口が変わっている
- 様式が新しくなっている
いずれも、数年に一度は起きます。案件ごとに手引きを取り直す。この一手間が、差し戻しを防ぎます。
他県の案件を受けるとき
県外の土地について相談を受けることがあります。制度は同じでも、運用は別物だと考えたほうが安全です。
| 確かめること | なぜ |
|---|---|
| 許可権者 | 指定都市・中核市・事務処理市町村の配分が違う |
| 条例区域の有無 | そもそも条例を定めていない県もある |
| 提案基準の類型 | 分家住宅の要件ひとつでも違う |
| 技術基準の細目 | 道路の幅員、調整池の考え方 |
| 審査会の日程 | 開催の頻度が違う |
熊本での進め方をそのまま持ち込まない。まず、その土地の許可権者の手引きを読むところから始めます。
まとめ
- 開発許可は都道府県知事が原則。指定都市・中核市・事務処理市町村は市町村が出す
- 熊本市は指定都市なので市が許可権者。県内のその他は県または事務処理市町村
- 権限の配分は見直されるので、案件ごとに市町村名で確かめる
- 許可権者が違えば、条例・提案基準・技術基準の細目・様式がすべて違う
- 農地・森林・盛土の窓口は、開発許可とはまた別に決まっている
