開発許可の地位の承継 ── 44条と45条の使い分け

この記事の要点
  • 相続や合併による一般承継は、当然に地位を引き継ぐ(44条)。届出で足りる
  • 土地を譲り受けた者への特定承継は、許可権者の承認が要る(45条)
  • 承認は自動ではない。資力・信用と、工事を完成させられるかが見られる
  • 造成中の土地を売買するなら、承認の段取りを契約の前に確かめる

開発許可は、土地に付いているのではなく、許可を受けた人に与えられています。

ですから、その人が替わるときには手続きが要ります。相続で替わるのか、売買で替わるのかで、扱いが違います。

二つの承継

一般承継(44条) 特定承継(45条)
場面 相続・合併など 売買・贈与など、土地の譲渡
効果 当然に地位を承継する 許可権者の承認を受けて承継する
手続き 届出 承認申請
審査 なし(事実の確認) あり
なぜ扱いが違うのか

相続や合併は、本人の意思とは別に、包括的に権利義務が移るものです。だから地位も当然に移る。

これに対して売買は、当事者が選んで移すものです。誰にでも移せるとすると、工事を完成させる力のない人に許可が渡ってしまいます。

開発許可には、道路や排水を造って公共に引き渡すという約束が含まれています。その約束を果たせるかどうかが問われるので、承認が要るわけです。

特定承継の承認で見られること

条文上、承認は「開発許可を受けた者が有していた権利義務を承継させることが適当と認められるとき」に与えられます。実務では、おおむね次が確かめられます。

  • 資力と信用 ── 工事を完成させられるか。決算書などの提出を求められることがある
  • 工事の施行能力 ── 施工体制
  • 土地の権利を取得したこと、または取得することが確実であること
  • 予定建築物の用途に変更がないか
  • 32条の同意の引き継ぎ
自動ではない

「土地を買えば許可も付いてくる」と考えていると、行き違いが起きます。承認されるまで、買主は開発許可を受けた者ではありません。

承認前に買主が工事を続ければ、無許可の工事になり得ます。工事が動いている土地の売買では、承認のタイミングを工程に組み込む必要があります。

売買のときに、決めておくこと

造成の途中、あるいは造成が終わって公告前の土地を売買する場合、契約の前に整理しておきたい点があります。

論点 考え方
承認が下りなかったら 解除の条件にしておくか、承認を停止条件とする
残工事の責任 どちらが完成させるか。費用の負担は
32条の同意 管理者に対して、承継の連絡が要るか確かめる
近隣への説明 事業者が替わることを、いつ誰が伝えるか
公共施設の移管 分筆・登記の作業を、どちらが担うか

いちばん揉めるのは残工事です。買主は「造成済み」と思って買い、売主は「あとは買主が仕上げる」と思っている。契約書に書いていなければ、後で必ず食い違います。

相続の場合

一般承継は当然に地位が移りますが、届出は必要です。そして実務上、次の点が問題になります。

  • 相続人が複数いる場合 ── 誰が事業を引き継ぐのかを決める必要がある
  • 工事を続ける意思と能力があるか
  • 資金の手当て ── 借入の名義変更
  • やめる場合、造成途中の土地をどう始末するか
やめるにも、手続きが要る

開発行為をやめるときは、工事の廃止の届出が必要です。放置してよいわけではありません。

掘りかけの土地、途中まで積んだ擁壁。危険な状態のまま残せば、是正を求められます。相続で引き継ぐ側にとっては、思わぬ負担になり得ます。

事業者が高齢である案件では、元気なうちに引き継ぎの段取りを決めておくことをお勧めしています。

いつ手続きするか

売買の前に、窓口に相談する

特定承継の承認には、当然ながら時間がかかります。契約してから相談に行くと、決済の日程に間に合わないことがあります。

私たちは、造成中の土地の売買が持ち上がった段階で、まず許可権者に相談します。確かめるのは次の三点です。

  • 承認申請に必要な書類
  • おおよその処理期間
  • 32条の同意や近隣説明の引き継ぎで、追加の手当てが要るか

これが分かれば、契約の条件と決済の日程が組めます。

承継の前に
  • 一般承継か特定承継か、どちらにあたるか特定した
  • 相続なら、事業を引き継ぐ相続人を決めた
  • 相続でも届出が必要であることを理解している
  • 売買なら、承認申請に必要な書類と処理期間を窓口で確かめた
  • 承認が下りない場合の扱いを、契約で決めた
  • 残工事の範囲と費用負担を、契約で明確にした
  • 32条の同意の引き継ぎについて、管理者に確認した
  • 近隣への周知の方法と時期を決めた
  • 公共施設の分筆・登記をどちらが担うか決めた
  • 事業をやめる場合、工事の廃止の届出が要ることを理解している

金融機関との順序

造成中の土地の売買では、承認・決済・融資の三つの順序を組む必要があります。ここが噛み合わないと、決済の日に動けません。

承認は、土地の所有権と結びつく

特定承継の承認では、土地の権利を取得したこと、または取得することが確実であることが見られます。

ところが買主は、決済しなければ所有権を得られません。そして決済には融資が要り、融資には担保の設定が要ります。

この循環をどう解くかは、案件ごとに窓口と金融機関に確かめるしかありません。売買契約書の写しで「取得が確実」と扱われる場合もあれば、別の書面を求められる場合もあります。

実務では、次のように組むことが多くあります。

  • 売買契約(承認を停止条件、または解除条件とする)
  • 承認申請 ── 契約書の写しを添えて
  • 承認
  • 決済・所有権移転・担保設定
  • 工事の再開

③と④の間が空くと、金利や現場の維持費がかかります。承認の処理期間を先に聞いておくのは、そのためです。

工事が止まっている土地を買うとき

造成が途中で止まったまま、売りに出ている土地があります。安く見えますが、確かめるべきことが多い物件です。

確かめること なぜ
許可はまだ生きているか 廃止の届出が出ていないか。期限や条件が付いていないか
どこまで完成しているか 残工事の範囲。見えない部分(埋設管)が最も読みにくい
32条の同意は生きているか 年数が経つと、管理者側の条件が変わっていることがある
近隣との経緯 止まった理由が近隣にある場合、引き継ぐことになる
安全な状態か 掘りかけののり面、途中の擁壁。是正を求められる可能性

止まっている理由は、たいてい一つではありません。資金だけが理由なら引き継げますが、技術的な壁や近隣との経緯が理由なら、同じ壁に当たります。止まった理由を聞き出すのが、いちばん大事な調査です。

承継しない、という判断

許可を返して、取り直す

承認を受けて地位を引き継ぐのではなく、いったん工事を廃止して、買主があらためて開発許可を取るという道もあります。

時間はかかりますが、次の場合には検討する価値があります。

  • 計画の内容を大きく変えたい(用途・区画割り・区域)
  • 当初の許可が古く、いまの基準との差が大きい
  • 32条の同意を取り直すことになるなら、どのみち手間は変わらない

承継のほうが常に早いとは限りません。変更許可を重ねるより、取り直したほうが結局早かったという案件もあります。

まとめ

  • 相続・合併による一般承継は当然に地位が移り、届出で足りる(44条)
  • 売買などの特定承継は、許可権者の承認が要る(45条)
  • 承認では資力・信用と、工事を完成させられるかが見られる。自動ではない
  • 造成中の土地の売買では、承認の段取りと残工事の責任を契約前に決める
  • 事業をやめるにも工事の廃止の届出が要り、危険な状態を残せば是正を求められる
開発許可の申請、お引き受けしています。

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