開発登録簿 ── 過去の許可を、どう調べるか
- 開発登録簿は、許可権者が調製し、誰でも閲覧できる公の帳簿(47条)
- その土地が過去に開発許可を受けたかどうかが分かる。42条か43条かの分かれ目になる
- 予定建築物の用途が記載されている。用途変更の可否は、ここから始まる
- 登記簿には現れない。別に確かめに行くもの
市街化調整区域の土地を扱うとき、あるいは造成地を買うとき。登記記録を見ただけでは分からないことがあります。
その土地が過去に開発許可を受けているか。受けているとして、何を建てる前提だったか。それが書いてあるのが、開発登録簿です。
何が書かれているか
都市計画法47条は、許可権者が開発登録簿を調製し、保管することを定めています。記載されるのは、おおむね次のような事項です。
| 項目 | 実務での意味 |
|---|---|
| 許可の年月日と番号 | いつの許可か。当時の基準が分かる |
| 開発区域の位置と面積 | どこまでが許可の範囲か |
| 予定建築物の用途 | これ以外を建てるには42条の許可が要る |
| 公共施設の種類・位置 | 道路・公園・水路がどこに置かれたか |
| 工事完了公告の年月日 | 建築の制限が解けているか |
| 41条の制限 | 建蔽率・高さなどの制限が付されている場合、その内容 |
開発登録簿は、請求すれば誰でも閲覧でき、写しの交付を受けられます。所有者でなくても構いません。
窓口は、その土地の許可権者。熊本市内なら熊本市、県が許可権者の区域なら県の土木事務所などです。自治体によっては、一覧をインターネットで公開しています。
どういうときに見に行くか
市街化調整区域の建物を扱うとき
建替えや用途変更の相談では、まずここを確かめます。
- 過去に開発許可を受けた土地 → 42条の世界(予定建築物以外の制限)
- 開発許可を受けていない土地 → 43条の世界(建築許可)
根拠条文が変わるので、ここを確かめずに申請の準備を始めると、途中で作り直しになります。
造成地を買うとき
工事完了公告が出ているか。予定建築物の用途は何か。41条の制限が付いていないか。この三点は、買う前に確かめておくべきものです。
「戸建住宅」を予定建築物として許可を受けた造成地に、共同住宅を建てようとする。これには42条の許可が要ります。
許可が得られるとは限りません。用途を変えることで、道路や排水の計画が足りなくなることがあるからです。
安く出ている造成地には、こうした制限が理由になっているものがあります。値段の理由は、たいてい書面のどこかに書いてあります。
古い擁壁や道路の素性を知りたいとき
いつの許可で、どの基準で造られたか。公共施設として市町村に移管されているのか、私道のままなのか。登録簿と、道路の管理者への照会を組み合わせると、たいてい分かります。
登記簿では分からない
開発許可の有無は、不動産登記には現れません。登記記録をどれだけ丁寧に読んでも出てきません。
同じように、次のものもそれぞれ別に確かめる必要があります。
- 開発許可 → 開発登録簿
- 建築確認 → 建築確認台帳(建築計画概要書)
- 道路の種別 → 道路管理者、建築指導部局
- 農地の履歴 → 農業委員会
調査とは、帳簿の所在を知っていることだと言ってもよいくらいです。
見つからないとき
登録簿に記載がない場合、考えられるのは次のいずれかです。
- そもそも開発許可を受けていない ── 許可が不要な規模・時期だった、または無許可
- 許可の時期が古く、制度の施行前だった
- 区域や地番の特定が誤っている
都市計画法の開発許可制度は昭和44年の施行です。それ以前の造成は、この制度の外にあります。古い造成地では、当時の記録そのものが残っていないこともあります。
その場合は、航空写真、旧公図、固定資産税の課税記録、建築確認台帳といった別の手がかりを組み合わせて、時期を推定していくことになります。
閲覧の実際
- 地番が分かるもの(公図の写し、登記事項証明書)
- 位置が分かる地図
地番で検索する仕組みなので、住居表示しか分からないと調べられないことがあります。先に公図を取っておきます。
閲覧して終わりにせず、写しを取って記録に残します。売買や設計の場面で、根拠として示すことになります。
- 地番を特定した(公図・登記事項証明書)
- 許可権者がどこか確かめた(市か、県か)
- 許可の年月日と番号を控えた
- 予定建築物の用途を確かめた
- 工事完了公告の年月日を確かめた
- 41条による制限の有無を確かめた
- 開発区域の範囲と、対象地の位置関係を確かめた
- 公共施設が市町村へ移管されているか確かめた
- 42条か43条か、根拠条文を特定した
- 写しを取って記録に残した
- 記載がない場合、別の手がかり(航空写真・課税記録)に当たった
熊本では、どこに聞くか
開発登録簿は、その土地の開発許可を出した者が保管しています。したがって、まず許可権者を特定します。
- 熊本市内 ── 指定都市として、市が許可権者です
- 県内のその他の市町村 ── 県が許可権者。ただし、事務処理市町村として権限を持つ市町村があります
権限の配分は見直されることがあります。対象地の市町村名で、県または市の公表資料を確かめてください。合併を経た地域では、旧町村ごとに扱いが違った時期もあります。
登録簿を読むときの注意
写しを手にしても、そこに書かれた文言だけでは判断がつかないことがあります。
| 気をつけること | なぜ |
|---|---|
| 許可の時期 | 当時の基準で審査されている。いまの基準とは違う |
| 予定建築物の書き方 | 「住宅」と「専用住宅」では、後の解釈が変わることがある |
| 開発区域の範囲 | 対象の地番が区域の内か外かを図で確かめる |
| 変更許可の有無 | 当初の内容だけを見て判断しない |
| 公告の有無 | 公告が出ていなければ、建築の制限が続いている |
疑問が残ったら、写しを持って窓口で確かめます。「この記載は、いまの運用ではどう扱われますか」という聞き方をすると、話が具体的になります。
調査の順番に、どう組み込むか
不動産の調査では、確かめる先がいくつもあります。開発登録簿は、そのなかでどこに置くか。
- ① 都市計画情報(区域区分・用途地域)── ここで市街化調整区域と分かれば、以降の重みが変わる
- ② 登記記録(権利関係・地目・建物の有無)
- ③ 開発登録簿 ── 過去の許可の有無
- ④ 建築確認台帳・建築計画概要書
- ⑤ 道路の種別(道路管理者・建築指導部局)
- ⑥ 農地なら農業委員会
③は、①で調整区域だと分かった時点で優先度が上がります。逆に、市街化区域の古い住宅地であれば、後回しでよいこともあります。調査は、全部を同じ重さでやるものではありません。
閲覧して「確かに許可があった」と確認しただけでは、後で使えません。売買の重要事項説明でも、設計の前提でも、根拠として示すのは写しです。
取得の日付も記録しておきます。制度も運用も動くので、いつ時点の情報かが、後から効いてきます。
まとめ
- 開発登録簿は許可権者が調製する公の帳簿で、誰でも閲覧できる
- 過去に開発許可を受けた土地かどうかが分かり、42条か43条かの分かれ目になる
- 予定建築物の用途と、工事完了公告の年月日が記載されている
- 開発許可の有無は不動産登記には現れない。別に確かめに行くもの
- 記載がない場合は、航空写真や課税記録など別の手がかりを組み合わせる
