調整区域の建築許可 ── 造成を伴わずに建てる

この記事の要点
  • 市街化調整区域では、造成しなくても、建てること自体に許可が要る。それが43条の建築許可
  • 審査の中身は34条とほぼ同じ考え方。政令で基準が定められている
  • 既存宅地の制度は平成12年に廃止された。「昔から宅地だから建てられる」は通らない
  • 許可済みの開発区域内は42条、それ以外の調整区域は43条。条文を取り違えない

市街化調整区域の土地を見に行くと、すでに平らな宅地であることがあります。造成の必要がない。ならば開発行為には当たらず、開発許可も要らない。

ここまでは正しい判断です。しかし、建てられるとは限りません。

市街化調整区域では、開発行為を伴わない建築にも許可が要ります。都市計画法43条の建築許可です。この条文を見落とした相談が、実務では最も多い部類に入ります。

43条は、何のためにあるか

抜け道を塞ぐ条文

開発許可の制度が造成だけを規制していたら、どうなるでしょうか。

造成の要らない平らな土地を選んで建てれば、市街化調整区域でも自由に建てられてしまいます。それでは、市街化を抑制するという区域区分の趣旨が働きません。

そこで43条は、市街化調整区域のうち開発許可を受けた土地以外の区域では、建築物の新築・改築・用途変更に許可を要するとしました。造成の有無ではなく、建てること自体を捉えます。

審査の中身は、34条と地続き

43条の許可基準は政令に定められていますが、その中身は34条の各号とほぼ同じ考え方でできています。

つまり、造成を伴う場合に34条で説明することを、造成を伴わない場合には43条で説明する。問われていることは変わりません。

状況 要る許可
造成を伴い、調整区域で建てる 開発許可(29条)+立地は34条で審査
造成を伴わず、調整区域で建てる 建築許可(43条)
許可済みの開発区域内で、予定どおり建てる 許可は不要(工事完了公告後)
許可済みの開発区域内で、予定と違うものを建てる 42条の許可
42条と43条を取り違えない

同じ市街化調整区域の建築でも、その土地が過去に開発許可を受けているかどうかで、根拠条文が変わります。

開発許可を受けた土地なら、予定建築物以外を建てるときは42条。開発許可を受けていない土地なら43条です。

過去の開発許可の有無は、開発登録簿で確かめられます。ここを確認せずに条文を選ぶと、申請そのものが受け付けられません。

43条の許可が要らない場合

次のものは、43条の許可を受けずに建てられます。

  • 都市計画事業の施行として行うもの
  • 農林漁業用の建築物と、農林漁業を営む者の住宅
  • 公益上必要な建築物のうち、政令で定めるもの
  • 非常災害のための応急措置
  • 仮設建築物、通常の管理行為・軽易な行為

29条ただし書の除外と、よく似た顔ぶれです。条文が変わっても、農林漁業と公益と非常災害という筋道は共通しています。

既存宅地制度は、もうない

平成12年に廃止された

かつて、市街化調整区域であっても、線引き前から宅地であった土地には「既存宅地の確認」という制度がありました。確認を受ければ、比較的自由に建てられたのです。

この制度は平成12年の改正で廃止され、経過措置も終わっています。

それでも「昔から宅地だから建てられるはずだ」という説明は、いまも耳にします。土地の売買で、この理解のまま話が進んでいることがあります。いまは、43条の許可か、条例による区域指定(34条11号・12号)で説明するしかありません。

廃止の受け皿として、多くの自治体が条例で区域を指定しています。熊本市の集落内開発制度もそのひとつです。その区域に入っていれば道は開けますが、入っていなければ別の説明が要ります。

許可を受けずに建ててしまったら

まれにですが、43条の許可を受けないまま建てられた建物に出会います。増築や用途変更で、そうと知らずに行われていることもあります。

売買・融資・建替えの、すべてで止まる

違法な状態のまま放置すると、次のような場面で行き詰まります。

  • 売却しようとしても、買主が融資を受けられない
  • 建て替えの許可が下りない
  • 是正指導、場合によっては監督処分の対象になる

時間が経つほど、当時の事情を知る人も資料も減っていきます。気づいた時点で相談するのが、いちばん傷が浅く済みます。

是正の道筋は、案件によって違います。あらためて許可を得られる場合もあれば、用途を戻すことで整理できる場合もあります。いずれにせよ、窓口と事実関係を共有するところから始まります。

実務で多い三つの場面

建替え

市街化調整区域の既存住宅を建て替えたい、という相談です。従前の建築物が適法に建てられたものかどうかが出発点になります。

建築時期、当時の許可や確認の記録、その後の増改築の経緯。これらが確かめられないと、審査は進みません。登記記録、建築確認台帳、固定資産税の課税記録、航空写真——手がかりは複数あります。

用途変更

倉庫を店舗にする、事務所を住宅にする。市街化調整区域では、用途を変えることにも許可が要ります。

もともと「人・事業に着目する号」で建てられた建築物は、ここで壁に当たりやすくなります。農家住宅を第三者に売って住まわせる、というのが典型です。

相続で引き継いだ建物

相続そのものには許可は要りませんが、引き継いだ後に建て替える、用途を変える、売却して他人が使う、という段になると許可の話になります。

相続の前後で、建物の素性を確かめておくことをお勧めしています。当時の関係者がいるうちのほうが、資料が集まります。

建物の素性を、どうたどるか

43条の相談は、ほとんどが「この建物は適法に建っているのか」という問いに行き着きます。所有者ご本人も知らないことが多く、資料も散らばっています。

私たちは、次の順で当たります。

調べるもの 分かること
開発登録簿 過去に開発許可を受けた土地か。予定建築物の用途は何だったか
建築確認台帳 確認を受けた年月日と、建築主・用途・規模
登記記録(建物) 新築の時期、増築の履歴、所有者の変遷
固定資産税の課税記録 課税が始まった年。確認の記録がない古い建物でも、存在の時期は追える
航空写真 線引きの時点で建物があったか。増築の時期
公図・旧土地台帳 地目の変遷。いつ宅地になったか
線引きの日を、先に押さえる

市街化調整区域の建物を調べるとき、基準になるのはその区域に線引きが行われた日です。

その日より前から建っていたのか、後に建てられたのか。後なら、当時どの根拠で許可を受けたのか。この一点で、調べる方向が決まります。

熊本県内でも、線引きの時期は区域によって異なります。市町村の合併を経ている地域では、旧町村ごとに扱いが違うこともあります。

資料が出てこないときは、当時の関係者に聞くのが最も早いことがあります。相続や売却の話が出てから慌てるより、事情を知る方がいるうちに確かめておくほうが確実です。

43条を検討するときの確認
  • その土地が市街化調整区域であることを、都市計画情報で確かめた
  • 過去に開発許可を受けた土地かどうか、開発登録簿で確かめた
  • 42条か43条か、根拠条文を特定した
  • 既存宅地の制度は廃止されていることを理解している
  • 条例による区域指定(34条11号・12号)に入っていないか確かめた
  • 建替えなら、従前の建築物が適法かを裏付ける資料を集めた
  • 用途変更なら、当初どの理由で建てられたかを確かめた
  • 農林漁業用・公益上必要などの除外に当たらないか確かめた
  • 建築確認は、43条の許可の後であることを工程に織り込んだ
  • 売却や賃貸の予定があるなら、用途の制限を依頼者に説明した

まとめ

  • 市街化調整区域では、造成しなくても建てることに43条の許可が要る
  • 審査の中身は34条と同じ考え方で、政令に基準が置かれている
  • 許可済みの開発区域内は42条、それ以外は43条。開発登録簿で確かめる
  • 既存宅地の制度は平成12年に廃止され、経過措置も終わっている
  • 建替え・用途変更・相続後の処分が、実務で多い場面である
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