違反と監督処分 ── 81条と、是正までの道筋
- 違反には監督処分(81条)がある。許可の取消し、工事の停止、建築物の除却まで命じられる
- 処分の相手は違反した本人だけではない。土地や建物を引き継いだ者にも及び得る
- 違反状態の土地は、売れない・建て替えられない・融資が付かない
- 是正は、気づいた時点で窓口に事実を出すところから始まる
無許可で造成してしまった。許可の内容と違う工事をした。予定と違う建物を建てた。
いずれも、意図的に行われるとは限りません。知らないまま、あるいは代替わりの過程で分からなくなって起きます。
ここでは、違反状態がどう扱われるのか、そしてどう解いていくのかを整理します。
監督処分という仕組み
都市計画法81条は、違反者等に対して必要な措置を命ずることができると定めています。命じられる内容は幅があります。
- 開発許可の取消し、または条件の変更
- 工事の停止
- 建築物その他の工作物の改築・移転・除却
- 土地の原状回復
命令に従わなければ、行政代執行の対象にもなり得ます。加えて、罰則が別に定められています。
処分の相手は、本人だけではない
ここが実務でいちばん重い点です。監督処分の相手方には、違反した本人のほか、違反状態の土地や建築物について権利を取得した者も含まれ得ます。
つまり——違反を知らずに買った人が、除却を命じられることがあるということです。
「前の所有者がやったことだから関係ない」は通りません。だからこそ、買う前に調べます。
違反状態の土地に起きること
命令が出るかどうかにかかわらず、違反状態の土地は動かなくなります。
| 場面 | 起きること |
|---|---|
| 売却 | 買主が付かない。重要事項として説明する義務がある |
| 融資 | 担保として評価されない。買主も借りられない |
| 建て替え | 許可が下りない |
| 増築・用途変更 | 同じく進まない |
| 相続 | 相続はできるが、是正の負担ごと引き継ぐ |
時間が経つほど、当時の事情を知る人も、資料も減っていきます。放置して良くなることは、ひとつもありません。
どうやって発覚するか
- 完了検査 ── 許可の内容と現地が違う
- 近隣からの通報 ── 実際にはこれが多い
- 売買の調査 ── 買主側の調査で判明する
- 建て替えの相談 ── 過去の経緯を調べて出てくる
- 相続の手続き ── 資産の整理の過程で
三番目と四番目で出てくると、取引や計画が止まった状態で是正に取りかかることになります。時間の余裕がない中での是正は、選べる手が少なくなります。
是正の進め方
気づいたときにやることは、順序が決まっています。
- ① 事実を整理する ── いつ、誰が、何をしたか。図面と写真で
- ② 現況を測る ── 許可の内容と、どこがどれだけ違うのか
- ③ 窓口に相談する ── 隠したまま進める道はない
- ④ 是正の方針を決める ── 原状に戻すか、あらためて許可を取るか
- ⑤ 工程と費用を見積もる
③をためらう気持ちは分かります。しかし自分から出した場合と、指摘されてから動く場合とでは、進み方が違います。是正の相談として受けてもらえるかどうかが変わります。
是正の二つの道
| 道 | 考え方 |
|---|---|
| 原状に戻す | 確実だが、造ったものを壊す費用がかかる |
| あらためて許可を得る | 現況が基準を満たせるなら。満たさなければ、この道はない |
二つ目が使えるかどうかは、現況が技術基準と立地基準を満たせるかで決まります。造ってあるから認められる、ということはありません。基準に足りないものは、足りないままです。
買う前に、どう防ぐか
違反状態の土地をつかまないために、確かめる項目は決まっています。
- 開発登録簿 ── 許可の有無、予定建築物、工事完了公告
- 建築確認台帳 ── 確認の記録と、建てられているものの一致
- 現況と登記の一致 ── 建物の位置・規模・用途
- 航空写真 ── いつ、何が建ったか
- 市街化調整区域なら、建てられた根拠(何号か)
- 造成の履歴 ── 擁壁やのり面が、いつ誰の手で造られたか
これらは、いずれも登記記録には出てきません。別々の窓口に確かめに行くものです。安い理由がある土地ほど、この作業が要ります。
- 開発登録簿で、許可の有無と内容を確かめた
- 許可の内容と現況の違いを、図と数字で整理した
- 建築確認の記録と、現況の建物を照合した
- 航空写真で、造成や建築の時期を確かめた
- 窓口に事実を出して相談した
- 原状回復と再許可の、どちらが可能か検討した
- 再許可の道なら、現況が技術基準を満たせるか確かめた
- 是正の工程と費用を見積もった
- 売買が絡むなら、重要事項として説明した
- 相続が絡むなら、是正の負担を相続人に説明した
意図しない違反が起きる場面
実務で出会う違反状態は、悪意から生じたものより、知らないうちに積み上がったもののほうが多いように思います。
| 場面 | 何が起きているか |
|---|---|
| 増築を重ねた | 一回ごとは小さくても、合計すると用途も規模も変わっている |
| 代替わりで用途が変わった | 農家住宅に別の世帯が住む。倉庫を店舗に使う |
| 資材置場が育った | プレハブが建ち、事務所になり、いつのまにか建築物の敷地 |
| 造成を少しずつ広げた | 面積要件を意識せずに、一体の開発とみなされる規模に |
| 擁壁を積み増した | 二段擁壁。安全性の説明がつかない |
どれも、「そのときは大したことだと思わなかった」という共通点があります。問題になるのは、売る・建て替える・相続するという節目です。
相続の場面で出てくる
いちばん難しいのが、当時の事情を知る人が既にいないケースです。
いつ建てたのか、どういう許可だったのか、なぜこの用途なのか。相続人には分かりません。資料も残っていない。
この場合、航空写真、固定資産税の課税記録、建築確認台帳、旧公図といった間接的な資料を積み上げて、経緯を推定していくことになります。時間も費用もかかります。
だからこそ、事情を知る方が元気なうちに、建物の素性を確かめて記録に残しておく。相続の準備として、これは効きます。
売主として、どう扱うか
違反状態、あるいはその疑いがある土地を売るとき、隠して売ることはできません。
- 宅地建物取引業者が関わるなら、重要事項として説明する義務がある
- 個人間の取引でも、告げずに売れば後の紛争になる
- 買主が建てられなければ、契約の目的を達せられない
実務としては、売る前に是正するか、是正の見込みと費用を明示して売るかのどちらかです。前者のほうが、結局は高く売れます。
まとめ
- 違反には監督処分があり、工事の停止から建築物の除却まで命じられる
- 処分の相手方は本人だけでなく、違反状態の土地や建物を取得した者にも及び得る
- 違反状態の土地は、売れず、融資も付かず、建て替えもできない
- 是正は、事実を整理して窓口に出すところから始まる。隠したまま進む道はない
- 買う前の確認は、開発登録簿・建築確認台帳・航空写真を組み合わせる
