開発審査会と34条14号 ── 提案基準という運用
- 開発審査会は、34条14号の議と審査請求の裁決という二つの役割を持つ
- 14号は条文が抽象的なので、多くの許可権者が「提案基準」で類型をあらかじめ示している
- 提案基準は自治体ごとに違い、改定される。前の案件の記憶で進めない
- 審査会は毎月とは限らない。資料の提出期限は会議の数週間前
市街化調整区域の案件で、34条の1号から13号までのどれにも当てはまらない。それでも、この土地でなければ成り立たない事業がある。
そのときに使うのが14号です。ただし、条文には具体的なことが何も書かれていません。
「周辺の市街化を促進するおそれがなく、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められるもの」——これだけです。何が当てはまるのかは、運用が決めています。
開発審査会とは何か
都市計画法78条に基づき、都道府県や指定都市などに置かれる合議制の機関です。委員は、法律・経済・都市計画・建築・公衆衛生・行政に関して優れた経験と知識を持つ者から選ばれます。
役割は二つあります。
- 34条14号の議 ── 例外的な開発を認めてよいかを審議する
- 審査請求の裁決 ── 開発許可の処分に不服がある場合の審査(50条)
つまり、例外を認める場でもあり、処分を争う場でもあるということです。行政の内部で完結させず、外部の目を入れる仕組みになっています。
提案基準という運用
14号の条文だけでは、申請する側も審査する側も判断がつきません。そこで多くの都道府県・指定都市が、あらかじめ類型を示した基準を作って公表しています。
名称は「提案基準」「開発審査会基準」「審査基準」など、自治体によって違います。中身としては、次のような類型が置かれていることがあります。
| 類型 | おおよその中身 |
|---|---|
| 分家住宅 | 農家等の世帯から分かれる者が、本家の敷地の近くに建てる住宅 |
| 既存建築物の建替え | 適法に建てられた建築物を、同じ規模・用途で建て替える |
| 社寺・仏閣 | 宗教施設。地域との結びつきが説明できるか |
| 既存事業所の拡張 | 調整区域で操業してきた事業所の増築 |
| 介護・福祉に関わる施設 | 自治体により扱いが分かれる |
| 収用対象事業による移転 | 公共事業で立ち退く場合の代替地 |
同じ「分家住宅」でも、求められる要件は自治体ごとに違います。
- 本家がその土地に住んできた年数
- 申請者と本家の続柄
- 申請者が他に住宅を所有していないこと
- 本家の敷地からの距離
- 敷地の規模の上限
そして基準そのものが改定されます。「前に同じような案件を通したから」という前提で進めると、要件が変わっていて通らないことがあります。案件ごとに、その時点の最新版を現物で確かめてください。
14号で進めるときの手順
- ① 提案基準を入手し、どの類型に乗るかを特定する
- ② その類型の要件を一つずつ、資料で裏付けられるか確かめる
- ③ 裏付けが取れないものがあれば、別の類型か、別の号を検討する
- ④ 事前協議で、窓口と類型の当てはめを共有する
- ⑤ 審査会の日程と、資料の提出期限を確認する
- ⑥ 申請 → 審査会 → 許可
①で類型が定まらないまま設計を進めるのが、いちばん危ない進め方です。類型が変われば、必要な資料も、敷地の取り方も変わります。
どの類型にも乗らないとき
提案基準の類型に当てはまらないが、事情としては認められてよいのではないか——という案件もあります。この場合、基準に定めのない案件として、個別に審査会にかけられることがあります。
ただし、道のりは長くなります。類型がある案件と比べて、求められる説明の量が格段に増えます。なぜこの土地でなければならないのか、なぜ市街化区域では困難なのか、周辺の市街化を促進しないと言えるのはなぜか。
審査会は、事業の良し悪しを判断する場ではありません。「市街化を抑制すべき区域で、例外を認めてよいか」を判断する場です。
ですから、事業の意義を熱心に語っても、それだけでは通りません。求められているのは次の二点です。
- 立地の必然性 ── なぜここでなければならないか。資源、地形、既存の施設との関係
- 市街化を促進しないこと ── 規模、周辺の状況、将来の連鎖
この二点に絞って資料を組み立てると、審議が具体的になります。
日程が工程を縛る
審査会は定期的に開かれますが、毎月とは限りません。そして、議案の資料には提出期限があり、会議の数週間前に設定されているのが通例です。
この期限に一日でも遅れると、次の回まで待つことになります。案件によっては、それだけで一か月から二か月が動きます。
日程は公表されていますから、工程表に先に書き込んでおく。そこから逆算して、資料の完成日を決めます。
許可を得た後に残るもの
14号で許可を得た建築物は、「その理由があったから認められた」建築物です。理由が消えれば、扱いが変わります。
- 分家住宅を第三者に売る → 用途の制限が問題になる
- 既存事業所を別の業種に転換する → あらためて手続きが要る
- 相続で承継する → そのまま住み続けるなら問題は生じにくいが、処分の場面で出てくる
依頼者には、許可の段階で「この建物は、将来こういう制約を受けます」と伝えておきます。十年後、二十年後に効いてくる話です。
- 提案基準の最新版を、許可権者の公表資料で入手した
- どの類型に乗るかを特定した
- 類型の要件を、一つずつ資料で裏付けられるか確かめた
- 他の号(とくに11号・12号の条例区域)で説明できないか先に確かめた
- 事前協議で、類型の当てはめを窓口と共有した
- 審査会の開催日程と、資料の提出期限を確認した
- 提出期限から逆算して、資料の完成日を決めた
- 立地の必然性と、市街化を促進しない理由を整理した
- 基準に定めのない案件なら、追加で必要な説明を確かめた
- 許可後の用途変更・売却の制限を、依頼者に説明した
審査請求という、もうひとつの役割
開発審査会は、例外を認める場であると同時に、処分を争う場でもあります。
開発許可の申請が不許可になった、あるいは付された条件に納得がいかない。そうしたとき、開発審査会に対して審査請求をすることができます(50条)。
実際のところ、審査請求に進む案件は多くありません。多くは、その手前で解けます。
- 不許可の理由を、条項まで具体的に確かめたか
- その理由が、事実の認定の問題か、基準の当てはめの問題か
- 資料を足せば覆るものか
- 別の号、別の類型で組み直せないか
事実の認定が違っているなら、資料で示せば済みます。基準の当てはめが争点なら、そこではじめて争うかどうかの判断になります。期限があるので、迷っている時間は長く取れません。
審査会にかかる案件の資料
審査会の委員は、その土地を見たことがありません。資料だけで判断します。ですから、資料の作り方が結果を左右します。
- 位置図 ── 市街化区域からの距離、周辺の集落との関係が一目で分かるもの
- 現況写真 ── 対象地と、その周囲。四方向から
- 周辺の状況図 ── 既存の建築物の分布。「市街化を促進しない」の裏付けになる
- 事業の必要性 ── なぜこの土地か。数字で示せるものは数字で
- 申請者の属性を示す資料 ── 類型によっては、これが要件そのもの
説明が長いほど良いわけではありません。委員が短時間で判断できる形に整えることが、いちばん親切です。
まとめ
- 開発審査会は、34条14号の議と審査請求の裁決という二つの役割を持つ
- 14号は条文が抽象的なので、提案基準で類型があらかじめ示されている
- 提案基準は自治体ごとに違い、改定される。案件ごとに最新版を確かめる
- 審査会は毎月とは限らず、資料の提出期限は会議の数週間前にある
- 14号で建てた建築物には、将来の用途変更・売却に制約が残る
