盛土規制法と開発許可 ── どちらの許可が要るか

この記事の要点
  • 開発許可と盛土規制法の許可は、目的が違うので、両方要ることがある
  • 開発許可は建てるための土地づくりを、盛土規制法は盛土そのものの危険を見ている
  • 盛土規制法は建築の目的がなくてもかかる。資材置場や農地の嵩上げでも対象になり得る
  • 規制区域の指定は都道府県等が行う。指定は順次進んでおり、区域図は必ず最新のものを見る

「開発許可を取るので、盛土のほうは要りませんよね」

そう聞かれることがあります。答えは、要ることがある、です。二つの許可は、同じ工事を別の角度から見ています。

ここでは、どちらがどこを見ているのか、どういうときに両方要るのかを整理します。

二つの法律は、別のものを見ている

目的が違う
  • 都市計画法の開発許可 ── 市街化のコントロール。無秩序な市街地の拡散を防ぎ、造成する以上は道路や排水などの基盤を備えさせる
  • 盛土規制法の許可 ── 崩落の防止。盛土や切土そのものが人家等に被害を及ぼさないようにする

目的が違うので、片方の許可を得たことが、もう片方を免除する理由にはなりません。

盛土規制法は、正式には宅地造成及び特定盛土等規制法といいます。2021年7月の静岡県熱海市での土石流災害を受けて、従来の宅地造成等規制法を全面的に改めたものです。

いちばん大きな違い ── 建築の目的が要らない

開発許可にかからない工事でも、盛土規制法にはかかる

開発行為の定義には「建築物の建築等の用に供する目的で」という限定があります。建てる予定がなければ、開発行為にはあたりません。

盛土規制法には、この限定がありません。盛土や切土という行為そのものを捉えます。

したがって、次のようなものが対象になり得ます。

  • 資材置場をつくるための造成
  • 農地の嵩上げ
  • 残土の受け入れ
  • 太陽光発電設備の設置に伴う造成

「建てないから何も要らない」という理解が、いちばん危ないところです。

規制区域という考え方

盛土規制法は、全国どこでもかかるわけではありません。都道府県知事等が区域を指定して、その中で規制します。

区域 性格
宅地造成等工事規制区域 市街地や集落など、人家等に被害を及ぼしうる区域。規制が厳しい
特定盛土等規制区域 市街地から離れていても、下流に人家等があり、崩落すれば被害が及ぶ区域
区域図は、必ず最新のものを

区域の指定は、基礎調査を経て順次進められています。去年は区域外だった土地が、いまは区域内ということが起こります。

手元の資料や、以前の案件で使った図面で判断しないでください。都道府県または市の公表資料を、その都度確かめます。

どういうときに両方要るか

状況 開発許可 盛土規制法
市街化調整区域で住宅を建てるため造成する(規制区域内) 要る 要ることがある
市街化区域で1,000平方メートル未満の造成(規制区域内) 要らない 要ることがある
資材置場をつくる(規制区域内) 要らない 要ることがある
建てるための造成(規制区域外) 要る 要らない

整理すると、「建てるか」で開発許可が、「規制区域内で土を動かすか」で盛土規制法が決まるという二軸です。二つは独立しています。

手続きの進め方

窓口が分かれることがある

開発許可と盛土規制法の許可は、同じ自治体でも担当課が違うことがあります。都市計画課と、建築指導課や砂防担当課、といった具合です。

両方が必要な案件では、それぞれの事前相談を並行して始めます。片方が終わってからもう片方に行くと、設計の手戻りが出ます。

技術基準にも重なりがあります。擁壁の構造、排水施設、のり面の勾配——同じ図面で説明できる部分は多いのですが、求められる添付資料や様式は別です。

工事が終わったあと

盛土規制法にも、開発許可と同じように中間検査と完了検査の仕組みがあります。そして、工事が終わった後も土地の所有者等には土地を安全な状態に維持する努力義務が課されます。

造成した土地を売却する場合、この維持の責任がどこまで引き継がれるかは、契約で整理しておくべき点です。「造って売って終わり」という考え方が通らなくなった、というのがこの法律の眼目のひとつです。

違反への対応が強化された

旧法からの大きな変更点として、罰則の強化と、無許可工事や是正命令違反に対する監督処分の仕組みが挙げられます。

また、崩落の危険がある既存の盛土についても、所有者等に対して是正を求められる枠組みが用意されています。過去に行われた造成であっても、危険な状態が続いていれば対象になり得ます。

土を動かす前の確認
  • その土地が規制区域内かどうか、最新の区域図で確かめた
  • 建築の目的があるか(開発許可の要否)を確かめた
  • 建築の目的がなくても、盛土規制法はかかり得ることを理解している
  • 切土・盛土の高さと面積を把握した
  • 開発許可と盛土規制法で、担当課が分かれていないか確かめた
  • 両方必要なら、事前相談を並行して始めた
  • 擁壁・のり面・排水の設計が、両方の基準を満たすか確かめた
  • 中間検査・完了検査の時期を工程に織り込んだ
  • 造成後の維持責任について、売買契約での扱いを整理した
  • 既存の盛土がある土地なら、その素性を確かめた

残土の受け入れという話

土地を持っていると、こういう話が持ち込まれることがあります。「近くの工事で出た土を入れさせてほしい。処分費を払うので、土地を嵩上げできて一石二鳥です」

悪い話には聞こえません。しかし、ここには三つの問題が潜んでいます。

受け入れた側に責任が残る
  • 許可の要否 ── 規制区域内で一定規模を超えれば、盛土規制法の許可が要ります。許可を取るのは、工事を行う者ですが、土地の所有者も無関係ではいられません
  • 土の素性 ── どこから来た土か。汚染された土であれば、後の負担は土地に残ります。土壌汚染対策法の調査義務が生じる場面もあります
  • 崩落したとき ── 盛土規制法は、土地の所有者・管理者・占有者に、土地を安全な状態に維持する努力義務を課しています。搬入した業者がいなくなっても、土地は残ります

熱海の災害が、まさにこの構図で起きました。制度が作り直されたのは、責任の所在が曖昧なまま盛土が積まれていたからです。

受け入れるのであれば、少なくとも次を書面で確かめます。搬出元の工事名と場所、土質試験の結果、許可の有無と許可番号、施工の管理者、完了後の点検の取り決め。口約束で受け入れて、後から自分の土地が問題になる——という相談を受けることがあります。

どちらの窓口から始めるか

迷ったら、開発許可の担当課から

両方が絡みそうな案件では、先に開発許可の担当課に相談するのが進めやすい順序です。

理由は二つあります。ひとつは、開発許可の担当課が庁内の関係各課を把握していること。もうひとつは、開発許可の要否が決まらないと、造成の設計そのものが固まらないことです。

そのうえで、盛土規制法の担当に「この計画で、そちらの許可も要りますか」と確かめます。同じ図面で説明できるので、二度手間にはなりません。

なお、盛土規制法の規制区域の指定状況、許可の基準、様式は、都道府県や市が公表しています。数値や様式は改定されるので、案件ごとに最新のものを取り直してください。

まとめ

  • 開発許可は市街化のコントロール、盛土規制法は崩落の防止。目的が違う
  • 盛土規制法には「建築の目的で」という限定がなく、資材置場や農地の嵩上げも対象になり得る
  • 規制区域は順次指定が進んでいるので、区域図は必ず最新のものを見る
  • 両方必要な案件では、窓口が分かれることがあり、事前相談は並行して始める
  • 造成後の維持責任と、既存の盛土への是正の枠組みが用意されている
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