地形分類図の読み方 ── 旧河道、後背低地、そして盛土地
- 地形分類は地理院地図でクリックすれば出る。土地の成り立ちが表示される
- 人工地形の区分に盛土地・埋立地、干拓地、旧水部がある
- 治水地形分類図には初版と更新版があり、その差が造成の年代を挟む
- ただし何で埋めたかは、どこにも書かれていない
登記も台帳も住宅地図も、人が土地に何をしたかの記録です。その手前に、土地そのものの成り立ちがあります。
低いから埋められた。水面だったから埋め立てられた。埋めるという行為の理由は、たいてい地形の側にあります。そして埋めた土がどこから来たかは、登記にも許可にも残りません。
この記事では、地形の資料をどう使うかを整理します。
地理院地図で、クリックすれば出る
入口はいちばん手軽なところにあります。国土地理院の地理院地図に「地形分類」という表示があり、地図上をクリックすると、その場所の土地の成り立ちが出ます。
出るのは二つです。土地の成り立ちと、地形から見た自然災害リスク。地形分類とは、地形をその形態・成り立ち・性質によって区分したものです。
もとになっているのは、土地条件図(数値地図25000)、脆弱地形調査、治水地形分類図(更新版)、沿岸海域土地条件図の四つです。複数の調査を一枚にまとめたものなので、地域によって元データが違います。
登記を取る前でも、現地に行く前でも見られます。地番が分かっていなくても、場所さえ分かれば開けます。
「この土地は何の上に載っているのか」を最初に押さえておくと、そのあとに集める資料の読み方が変わります。台地の上なのか、川の跡なのか、埋め立てた場所なのか。
人工地形の区分に、埋めた跡が出る
地形分類は自然地形と人工地形に分かれます。地歴調査で先に見るのは、人工地形のほうです。
| 区分 | 意味すること |
|---|---|
| 盛土地・埋立地 | 主として低地及び水部に土を盛って造成された平坦地 |
| 干拓地 | 水部を干して陸地化した土地 |
| 旧水部 | もとは水面だった |
| 切土地 | 山地・丘陵、台地・段丘などの造成地のうち、切取りによる平坦地 |
| 農耕平坦化地 | 耕作のためにならされた土地 |
| 平坦化地 | 切土と盛土を組み合わせてならした土地 |
このほかに「改変工事中の区域」があります。調査時点で工事中だった、という意味です。
盛土地・埋立地、干拓地、旧水部。この三つが出たら、土が外から持ち込まれた可能性を考えます。
自然地形で見るのは、低いところ
自然地形の区分は多いのですが、地歴調査で効くのは限られます。
| 区分 | 成り立ち |
|---|---|
| 旧河道 | 過去の河川流路の跡 |
| 後背低地 | 河川の堆積作用が比較的及ばない沼沢性起源の低湿地 |
| 凹地・浅い谷 | 相対的に低い地形 |
| 氾濫平野 | 河川の堆積作用により形成された、広く開けた平坦地 |
いずれも周囲より低い場所です。低いから、埋められます。
なお区分の呼び名は、資料によって少し違います。地理院地図の地形分類では「後背低地」ですが、治水地形分類図では「後背湿地」です。報告書には、見た資料の名前と、そこでの呼び名をそのまま書きます。
そして埋めた結果、現況は平らな宅地になります。現地に立っても、そこが川の跡だったとは分かりません。地目が水面から宅地に変わった年をどう読むかは地目の変更時期が示すものにまとめてあります。
版が二つあることが、効く
ここが、この記事のいちばん重いところです。
地形分類のもとになっている資料の一つ、治水地形分類図には初版と更新版があります。国が管理する河川の流域を対象に、二万五千分の一の範囲で整備されたものです。
初版が作られたのは1976年度から1978年度。つまり昭和50年代前半の地形が、そこに写っています。
更新版は2009年から2021年1月にかけて。およそ三十年から四十年の開きがあります。
更新版で「盛土地・埋立地」になっている場所が、初版では何だったか。水部だったのか、後背低地だったのか、それとも初版でもすでに盛土地だったのか。
二つの版の差は、造成がその間に行われたことを示します。航空写真で年代を挟むのと、同じ手です。
年代の挟み方そのものは航空写真で土地の履歴を読むに書いたとおりです。写真は建物の形を、地形図は地面の形を写します。見ているものが違うので、両方当たります。
熊本平野は白川と緑川の流域にあたり、どちらも国が管理する河川です。整備の対象になっているかどうかは、地理院地図の同じレイヤで確かめられます。
何で埋めたかは、書かれていない
「盛土地・埋立地」と分類されていても、何を入れて埋めたかは分かりません。
近くを掘った残土なのか、他所から運んだ土なのか。造成の際に、別の場所で出た土が持ち込まれることがあります。その土に何が含まれていたかは、地形図にも登記にも、開発の許可にも書かれていません。
だから地形分類で「盛土地」が出たときに言えるのは、そこに外から土が入った可能性がある、というところまでです。それ以上は、別の資料で追うか、掘って調べるかになります。
盛土そのものの規律は盛土規制法にあります。ただし規制の対象になる時期より前の造成は、その記録では追えません。
地形図で言えることの限界
使うときに、三つ気をつけます。
一つ目。縮尺です。二万五千分の一の範囲で整備されたものなので、筆界の精度はありません。一筆の中で区分が変わることも、境目が実際とずれていることもあります。
二つ目。調査時点です。区分は、その図が作られた時点の地形をもとにしています。その後に造成されていれば、図には出ていません。
三つ目。地形は履歴そのものではありません。旧河道であることは、そこで何かが行われたことを意味しません。疑いの当たりを付ける資料であって、事実を確かめる資料ではありません。
登記と、突き合わせる
地形分類だけでは止まります。突き合わせる相手は、この連載で書いてきたものです。
| 地形で出たもの | 突き合わせる先 |
|---|---|
| 旧水部・干拓地 | 地目が池沼・ため池・用悪水路から変わった年 |
| 盛土地・埋立地 | 航空写真で造成が写っている年 |
| 農耕平坦化地 | 旧土地台帳の地目と、農地転用の記録 |
| 切土地・平坦化地 | 開発登録簿。開発行為の許可 |
台帳と登記簿の読み方は旧土地台帳の読み方と閉鎖登記簿で分かることに、開発の記録は開発登録簿にあります。
そして報告書には、地形分類で何が出て、それを何と突き合わせ、どこまで確かめられたかを書きます。「盛土地だった」だけでは、読む側は次に進めません。書き方は調査で分からなかったことを、どう書くかにまとめてあります。
- 地理院地図の地形分類で、対象地の区分を見た
- 人工地形(盛土地・埋立地、干拓地、旧水部)に当たらないか確かめた
- 自然地形の旧河道・後背低地・凹地に当たらないか確かめた
- 初版と更新版で区分が変わっていないか比べた
- 一筆の中で区分が分かれていないか見た
- 造成の年代を、航空写真と地目の変更年で挟んだ
- 何で埋めたかは分からない、と依頼者に伝えた
- 報告書に、見た資料の名前と版を書いた
まとめ
- 地形分類は地理院地図でクリックすれば出る。土地の成り立ちと、地形から見た自然災害リスクが表示される
- 人工地形の区分に、盛土地・埋立地、干拓地、旧水部、切土地、農耕平坦化地がある
- 自然地形では旧河道・後背低地・凹地が効く。低いところは埋められる
- 治水地形分類図の初版は1976〜1978年度、更新版は2009〜2021年1月。二つの版の差が造成の年代を挟む
- ただし何で埋めたかは書かれていない。地形は疑いの当たりを付ける資料にとどまる
熊本県内の土地の地歴調査(土壌汚染フェーズⅠ)。法務局と市町村の窓口でしか確認できない資料を、現地で集めます。株式会社地央(熊本市)が承っています。
