開発許可が要らない場合 ── 29条ただし書の読み方
- 許可が要らない場合は、規模・用途・事業・状況の四つの筋道で定められている
- 市街化調整区域の農林漁業用建築物と農林漁業者の住宅は、規模を問わず許可が要らない
- 病院・学校・社会福祉施設は、平成18年の改正で除外から外れた。いまは許可が要る
- 「開発許可が要らない」は「何もしなくてよい」ではない。43条の建築許可が残ることがある
都市計画法29条は、開発行為には許可が要る、と定めたうえで、ただし書で例外を並べています。
この例外の一覧は、実務でいちばん使う条文でありながら、いちばん誤解されている条文でもあります。「昔は要らなかった」という記憶のまま話が進んでいることが、しばしばあります。
ここでは、除外の筋道を四つに整理して読み直します。
除外は、四つの筋道でできている
- 規模で外れる ── 小さいから、許可までは求めない
- 用途で外れる ── 農林漁業用、公益上必要なもの
- 事業で外れる ── すでに別の法律の枠組みで審査されている
- 状況で外れる ── 非常災害、軽易な行為
条文の順に覚えようとすると混乱しますが、この四つのどれで外れるのかを先に決めると、確認すべき窓口も自然に決まります。
規模で外れる場合
いわゆる面積要件です。区域によって下限が違います。
| 区域 | 許可が要る規模 |
|---|---|
| 市街化区域 | 1,000平方メートル以上(三大都市圏の一定区域は500平方メートル以上) |
| 市街化調整区域 | 規模を問わず必要 |
| 非線引き都市計画区域 | 3,000平方メートル以上 |
| 準都市計画区域 | 3,000平方メートル以上 |
| 都市計画区域外 | 1ヘクタール以上 |
市街化区域の1,000平方メートルは、条例で300平方メートルまで引き下げることができます。市街化の状況によって、実際に引き下げている自治体があります。
「1,000平方メートル未満だから要らない」と早合点せず、その市町村の条例を確かめてください。
市街化調整区域に規模の下限がないことも、あらためて確かめておきたい点です。一戸の住宅を建てるための小さな造成でも、開発許可の対象になります。
用途で外れる場合
農林漁業のための建築物
市街化調整区域で行う開発行為のうち、次のものは許可が要りません。
- 畜舎、蚕室、温室、堆肥舎、農機具の収納施設など、農林漁業を営むために必要な建築物
- 農林漁業を営む者の居住のための建築物
ひとつ。これは市街化調整区域と非線引き区域の話です。市街化区域内では、この除外は働きません。
ふたつ。「農家住宅だから自由に建てられる」と説明されることがありますが、その人が本当に農林漁業を営む者にあたるかは審査されます。耕作面積や従事日数の目安を設けている自治体もあります。将来その住宅を第三者に売るときに、用途の制限が問題になることも珍しくありません。
公益上必要な建築物
駅舎その他の鉄道施設、図書館、公民館、変電所など、公益上必要で、かつ開発区域及びその周辺の地域における適正かつ合理的な土地利用及び環境の保全を図るうえで支障がないものが対象です。
かつては、病院・学校・社会福祉施設もこの除外に含まれていました。しかし平成18年のまちづくり三法の改正で、これらは除外から外されました。
つまりいまは、市街化調整区域に病院や特別養護老人ホームを建てるなら、開発許可が要ります。34条のどの号で立地を説明できるかを、設計に入る前に詰めておく必要があります。
この改正は、郊外への公共・準公共施設の拡散が市街地の空洞化を招いた、という反省から行われたものです。二十年近く前の改正ですが、いまも古い理解のまま話が進んでいる場面に出会います。
事業で外れる場合
すでに別の法律の手続きの中で計画が審査されているものは、重ねて開発許可を求めません。
- 都市計画事業の施行として行うもの
- 土地区画整理事業の施行として行うもの
- 市街地再開発事業の施行として行うもの
- 住宅街区整備事業の施行として行うもの
- 防災街区整備事業の施行として行うもの
- 公有水面埋立法の免許を受けた埋立地で、竣功認可の告示前に行うもの
ここで大切なのは「施行として行う」という限定です。区画整理の区域内であっても、事業として行われるのではなく、個々の権利者が自分の敷地で行う造成であれば、この除外は働きません。
状況で外れる場合
- 非常災害のため必要な応急措置として行うもの
- 通常の管理行為、軽易な行為 ── 仮設建築物の建築、車庫や物置など附属建築物の建築を目的とする小規模なものなど
「軽易な行為」の具体的な線引きは政令に委ねられ、運用でさらに細かくなります。既存の住宅に車庫を建て増しするような場合は、この筋道で説明できることが多いのですが、規模と位置によります。
区域によって、除外の効き方が違う
同じ「農林漁業用だから許可が要らない」という説明でも、土地がどの区域にあるかで結論が変わります。ここは混同されやすいところです。
| 除外の理由 | 市街化区域 | 市街化調整区域 |
|---|---|---|
| 規模が小さい | 1,000平方メートル未満なら不要 (条例で引下げあり) |
規模による除外はない |
| 農林漁業用 | 働かない | 働く |
| 公益上必要 | 働く | 働く |
| 事業の施行として | 働く | 働く |
市街化区域で農業用倉庫を建てる場合、農林漁業用の除外は使えません。面積で判断することになります。「農業用だから要らない」という説明を市街化区域で受けたら、いったん立ち止まってください。
市街化区域は、すでに市街化されている、または優先的に市街化を図る区域です。そこでの開発は、抑制すべきものではなく、基盤を整えながら進めるべきものと位置づけられています。
したがって除外の理由も、「市街化を抑制する必要がないから」ではなく、「規模が小さく基盤への影響が限られるから」に変わります。条文の並びを、区域の性格から読み直すと迷いません。
「要らない」で終わらせてはいけない
市街化調整区域では、開発行為を伴わない建築にも、43条の建築許可が要ります。
造成をしないから開発許可は要らない。そこまでは正しい。しかしその土地が市街化調整区域なら、建てること自体に別の許可が要るのです。29条だけを見て「不要」と結論すると、ここで止まります。
29条で外れたあとに、なお確かめるべきものを並べておきます。
| 確かめること | 根拠 |
|---|---|
| 建てること自体の可否 | 都市計画法43条(市街化調整区域) |
| 農地を転用してよいか | 農地法4条・5条、農振法(除外) |
| 盛土の規制区域内か | 盛土規制法 |
| 接道義務を満たすか | 建築基準法43条 |
| 災害の区域にかかっていないか | 災害危険区域、土砂災害特別警戒区域ほか |
判断の根拠を、残しておく
「開発許可は要らない」という結論は、その場では軽く扱われがちです。しかし後になって問題が起きるのは、たいていこの結論のほうです。
土地を売るとき、融資を受けるとき、増築するとき——当時なぜ許可が要らないと判断したのかを、誰も説明できなくなっています。
- いつ ── 相談した年月日
- どこで ── 自治体名と担当課
- 何を示して ── 提示した図面・写真・地番
- どう言われたか ── 回答の中身と、根拠として示された条項
窓口の回答は、担当者が変われば説明の仕方も変わります。争うためではなく、次の人が同じ土地を扱うときのために残します。
相談記録を一枚にまとめて、図面や公図の写しと一緒に保管しておく。それだけで、数年後の手戻りがずいぶん減ります。
- 四つの筋道(規模・用途・事業・状況)のどれで外れるのか、特定した
- 市街化区域の面積要件が、条例で引き下げられていないか確かめた
- 市街化調整区域には規模の下限がないことを理解している
- 農林漁業用の除外は、市街化区域では働かないことを確かめた
- 病院・学校・社会福祉施設は除外されないことを確かめた
- 「施行として行う」に本当にあたるか確かめた
- 市街化調整区域なら、43条の建築許可の要否を確かめた
- 農地転用・農振除外の要否を確かめた
- 盛土規制法の規制区域内かどうか確かめた
- 窓口での回答を、日付と担当課とともに記録した
まとめ
- 29条ただし書の除外は、規模・用途・事業・状況の四つの筋道で整理できる
- 市街化区域の面積要件は、条例で300平方メートルまで引き下げられる
- 農林漁業用の除外は、市街化調整区域と非線引き区域の話である
- 病院・学校・社会福祉施設は、平成18年の改正で除外から外れた
- 開発許可が不要でも、43条の建築許可・農地転用・盛土規制法は別に残る
