CHIOU / 株式会社地央

外国人土地取得を含む土地制度の見直しが取りまとめ段階に ── 不動産・開発・自治体の実務は何に備えるか

この記事の要点
  • 国土交通省は令和8年7月31日、「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議」の第5回会合を開催。議題は「取りまとめについて」であり、昨年度来の検討が最終段階に入った。
  • 背景には管理不全土地の増加と外国人による土地取得への懸念がある。内閣官房の「外国人による土地取得等のルールの在り方検討会」も令和8年3月以降4回開催されており、政府全体の検討課題となっている。
  • 規制の対象・基準は未確定だが、取引時の確認・届出実務の拡充につながる可能性がある。不動産事業者・開発事業者・自治体は、取りまとめ公表の定点観測と現行届出実務の再点検を今から始めたい。

何が起きたか

国土交通省は令和8年7月29日、「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議」の第5回会合を同月31日に開催すると発表しました。議題は「『土地の取得・利用等に関する有識者会議』取りまとめについて」および意見交換であり、これまで積み重ねてきた検討が取りまとめという最終段階に入ったことを示しています。議事要旨等は後日、国土交通省ホームページに掲載される予定です。

この有識者会議は、人口減少に伴う土地需要の減少を背景に、土地政策の課題が「取引の活性化」から「適切な利用・管理の確保」へと移るなかで設置されたものです。不適切な土地利用や外国人による土地取得への国民的な関心の高まりを受け、制度の整備・見直しを含めた必要な対応策を検討することが設置の趣旨とされています。

見逃せないのは、国土交通省の会議と並行して、内閣官房に「外国人による土地取得等のルールの在り方検討会」が設けられている点です。同検討会は令和8年3月4日の初会合以降、4月9日、4月30日、7月21日と計4回開催されており、土地の取得ルールの見直しは一省庁の検討にとどまらず、政府全体のアジェンダとして動いています。

いつから、誰に効くか

現時点で新しい法律や規制が成立・施行されたわけではありません。しかし有識者会議が取りまとめの議論に入った以上、次の焦点は、取りまとめ内容の公表と、それを受けた制度化――新規立法か、既存制度の拡充・運用強化か――の時期に移ります。制度検討の常道からすれば、取りまとめの公表後、法案化や政省令・運用指針の整備が続く展開が想定され、実務側にとっては「まだ決まっていないが、準備を始めるべき時期」に入ったと言えます。

影響が及びうるのは、第一に売買仲介・買取再販・賃貸管理を担う不動産事業者、第二に用地取得を伴う開発事業者、第三に土地利用行政や管理不全土地・空き家空き地対応を担う自治体の実務者です。なお現行制度としては、重要土地等調査法に基づく注視区域・特別注視区域の指定が進んでおり、特別注視区域内の一定面積(200平方メートル)以上の土地・建物の売買には事前届出が必要です。新たなルールがこの枠組みの延長として構築されるのか、別立ての制度となるのかは、取りまとめの公表を待つ必要があります。

実務への影響

取引時の確認・届出実務が重くなる可能性

仮に取得者の属性や利用目的の確認・報告を求める仕組みが導入されれば、売買契約の実務に新たな確認項目が加わることになります。犯罪収益移転防止法の取引時確認や重要土地等調査法の届出がそうであったように、制度導入時には社内フローへの組み込みとチェックリスト化が最初の関門になります。取りまとめの公表内容を見てから慌てるのではなく、現行の確認・届出実務がどこまで整理できているかを先に棚卸ししておくことが、結果的に移行コストを下げます。

未確定情報の先走りに注意

規制の対象範囲・面積要件・審査基準などは現時点で一切確定していません。顧客や住民への説明は「政府で制度の在り方が検討されており、取りまとめが近い」という事実の範囲にとどめ、確定した規制であるかのように伝えることは避けてください。現行の重要土地等調査法に基づく届出義務は、従来どおり適用されます。

用地取得・開発スケジュールへの織り込み

区域指定型の規制が拡充された場合、対象区域内の用地取得には届出や審査の期間が発生し得ます。中長期の開発案件を抱える事業者は、取りまとめ公表のタイミングで、事業スケジュールとデューデリジェンス項目(取得主体・区域指定・利用目的の確認)を見直せるよう、案件リストをあらかじめ整理しておくとよいでしょう。

自治体は土地利用行政との接続を

この検討は外国人による取得への対応だけでなく、管理不全土地や所有者不明土地への対応と一体で進められています。自治体側では、土地政策の担当部局に加え、空き家・空き地対策や都市計画の部局にも関係が及ぶ可能性があり、庁内での情報共有ルートを今のうちに確認しておくことが望まれます。

ウォッチすべき公表資料

第5回会合の議事要旨・資料は後日、国土交通省ホームページに掲載予定です。国交省の有識者会議ページと内閣官房検討会ページの両方を定点観測することで、制度化の方向性と時期をいち早く把握できます。

何をすればよいか

  • 国交省有識者会議と内閣官房検討会の公表資料を定点観測する担当を決め、取りまとめの公表を確実に把握する。
  • 重要土地等調査法など現行の確認・届出実務を再点検し、社内フロー・チェックリストを最新の区域指定に合わせて更新する。
  • 中長期の用地取得・開発案件を洗い出し、規制拡充を想定した場合のスケジュール・デューデリジェンス項目への影響を試算しておく。
  • 自治体は土地政策・空き家対策・都市計画の部局間で情報共有体制を確認し、住民・事業者からの問い合わせに備えた想定問答を用意する。

出典

実務で使える講座のご案内

土地の調査・許認可・契約について、無料の講座を公開しています。制度が動く前に、いまの実務を確かめておきたい方へ。

不動産スクールの詳細を見る
PAGE TOP